COLUMN

エンターテイメントに関する法務や、インターネットトラブルについて、実務を交えて随時コラムを更新しております。
気になる記事があれば、是非ご覧ください。

エンタメ・知財法務

2025.10.28

ゲーム事業の海外展開〜韓国における国内代理人の選任義務〜

近年、エンタメコンテンツを海外に展開する企業が増加しています。特に、韓国は日本のエンタメコンテンツが好評であり、海外展開の際の有力な候補となります。

韓国において、海外ゲーム事業者のうち一定の条件を満たす者は、韓国内に「国内代理人」を選任する義務が創設され、2025年10月23日から施行されます。

本稿では、どのような法律に基づき、どのような対応が必要かについて解説をいたします。

CONTENTS

執筆者プロフィール

弁護士法人LEON
代表弁護士 田中 圭祐

大手エンタメコンテンツ会社の法務部に所属していた経験から、
企業法務、知的財産法務、渉外法務の分野を中心に活動しております。
事務所としては、これらの分野に加え、インターネット問題の解決に積極的に取り組んでおります。

ゲーム産業振興法概要

ゲーム産業振興法の成り立ち

韓国には、ゲーム産業振興法という法律が存在します。日本には、そのような法律は存在しませんし、諸外国を見ても、もっぱらゲームを対象とした法律というのは珍しく、韓国独自の仕組みといえます。

1990年代末頃より、オンラインゲームが普及し始め、韓国で爆発的な人気を博しました。その過程で、韓国国内で、両親がゲームに没頭したことを原因とする育児放棄、未成年の課金や暴力的なトラブル、国民のゲーム依存症、ゲームをプレイしすぎて亡くなってしまう、などの問題が相次ぎ、大きな社会問題となりました。

そこで、韓国では、2006年にゲーム産業振興法という法律が制定され、ゲーム事業者に対する規制を設けるに至ったのです。

ゲーム産業振興法の概要

ゲーム産業振興法は、1条に記載されている通り、ゲーム産業の発展と、国民の保護を目的とした法律です。

第1条 目的

この法律は、ゲーム産業の振興のための基盤を整備し、ゲームの制作・流通・利用に関する事項を定めることにより、健全なゲーム文化の振興および国民経済の発展に寄与することを目的とする。

ゲームの等級分類制度(21条)、不法・有害ゲームの規制(28条、32条等)、行政監督と報告義務(31条)等が様々な規制が置かれています。

代表的な規制に一つとして、韓国では、ゲームの等級をあらかじめ定めた上、等級に応じて販売等を行う必要があります。

なお、日本でも、ゲームの対象年齢等が記載されていますが、あれはプラットフォーム事業者側の自主的な規制であり、法的な制度ではありません。

したがって、韓国は日本よりもゲームに対する規制が強いといえます。

第21条(等級分類)

ゲームを流通させ、または利用に供する目的で制作または配給しようとする者は、そのゲーム物を制作または配給する前に、委員会から当該ゲームの内容に関して等級分類を受けなければならない。・・・(略)

第32条(不法ゲーム等の流通禁止)

何人も、ゲーム流通秩序を乱す次の各号の行為をしてはならない。ただし、第4号に該当する場合で「射幸行為等の規制および処罰特例法」に基づく合法営業を行う者は除く。

  1. 第21条第1項または第21条の10第1項に基づく等級を受けていないゲーム物を流通または提供し、またはそのために陳列・保管する行為。
  2. 等級を受けた内容と異なる内容のゲーム物を流通または提供し、または陳列・保管する行為。
  3. 等級を受けたゲーム物を、第21条第2項各号の等級区分に反して提供する行為。

・・・(略)

また、今は廃止されていますが、以前は韓国で海外の事業者がゲームを販売する場合、現地法人の設立が求められたり、未成年者が夜間にゲームにアクセスできないようにする仕様をゲームに組み込まなければならなかったりと、様々な規制が存在しました。

現在は、社会的なゲームに対する批判もある程度落ち着いて、多少規制も緩和され始めた印象です。

代理人の選任義務

代理人選任義務に関する規定と要件

規制が緩和される一方で、新たに法改正がなされ、海外ゲーム事業者のうち一定の条件を満たす者は、韓国内に「国内代理人」を選任する義務が創設されました。この改正は、2024年10月22日に公布され、2025年10月23日から施行されます。

第31条の2(国内代理人の指定)

  1. 大韓民国に住所または営業所を有しないゲーム配給業またはゲーム提供業を営む者であって、ゲーム利用者数や売上高などを考慮して大統領令で定める基準に該当する者は、次の各号に掲げる事項について本人を代理する者(以下「国内代理人」という)を、書面により指定しなければならない。
    1. 第31条第2項に基づく報告義務の履行
    2. 第33条に基づくゲーム製品の表示義務の履行
  2. 国内代理人は、大韓民国に住所または営業所を有する者でなければならない。
  3. 第1項に基づいて国内代理人を指定する場合、ゲーム事業者が「約款の規制に関する法律」第3条第1項に従って作成する約款には、次の事項を含めなければならない。
    1. 国内代理人の氏名(法人である場合は、法人の名称及び代表者の氏名)
    2. 国内代理人の住所(法人である場合は営業所の所在地)、電話番号およびメールアドレス
  4. 国内代理人が第1項各号に関連して本法に違反した場合、その違反は当該ゲーム事業者が行なったものとみなされる。
  5. 国内代理人は、第1項のゲーム事業者との間で、有効な連絡手段を確保しなければならない。

具体的に、対応が必要となる事業者の要件は以下の通りで、いずれかに該当すれば、代理人の選任が必要となります。

大統領令

第18条の3(国内代理人の指定の対象となる者の範囲)

  1. 法第31条の2第1項において、「大統領令で定める基準に該当する者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
    1. 前年度(法人の場合は直前の事業年度)における総売上高が1兆ウォン以上である者。
    2. 電気通信事業法に基づきモバイル通信端末にインストールされるゲーム物(韓国内で販売されるものに限る)を配布または提供し、前年を基準として1日平均1,000件以上のインストール数を有する者。
    3. ゲーム物の流通秩序を著しく乱す、またはそのおそれのある事故または事件を発生させ、または発生させるおそれがあり、文化体育観光部長官から法第31条第2項に基づく報告を求められた者。
  2. 第1項第1号に定める総売上高は、前年の平均為替レートを適用して韓国ウォンに換算した額を基準とする。

3号は例外的に問題が発生した場合の条項となりますので、1号の年間1兆ウォン(1100億円)、または2号の1日平均1000件以上のインストールという要件が重要となります。

1号の1兆ウォンは韓国国内の売上ではなく、全世界の売上が対象となります。

代理人選任制度の実務的な対応

上記の通り、一定の要件を満たすゲーム事業者は、韓国国内に代理人を選任する必要があります。その上で、利用規約に代理人の連絡窓口を記載することになります。

代理人選任制度は、主に行政からの問い合わせに対応するためのものとして機能します。

日本では、電気通信事業法によって、外国法人であっても国内における代理人の設置が義務付けられています。これは、Google、Instagram、Xなどでの誹謗中傷事案において、発信者情報開示請求をする際、海外送達に非常に時間がかかり、連絡方法も不明であることが多く、法的手続きや行政手続きの際に不都合が大きかったため、2021年に法改正がなされた背景があります。

韓国のゲーム産業振興法の改正も、同様に、海外企業への法的な対応や、行政の対応等を円滑にするためのものです。

したがって、該当事業者は、その種の手続きの連絡が円滑に行うことができる代理人を選任する必要があり、法律事務所等への依頼をするのが一般的な対応です。

まとめ

本稿では、新設された、韓国のゲーム産業振興法の代理人選任義務について解説いたしました。

弊所では、エンターテイメントコンテンツの韓国展開についても積極的に対応を行なっておりますので、代理人選任の件でお困りの事業者様はお気軽にご相談ください。

また、上記に限らず、ゲーム産業振興法、韓国個人情報保護規制、電子商取引法等、全般的な対応も可能ですので、韓国展開を検討している事業者様や、韓国展開を既にしているが法令を遵守できているか不安がある事業者様等、お気軽にお問い合わせください。

カテゴリ一覧

 
 
 

電話
受付時間

10:00〜19:00

※都合により休業となる場合がございます。
※お電話が繋がらない場合は、恐れ入りますが、
メールまたはLINEにてお問い合わせください。

個人情報の取扱いについて

当事務所は、プライバシーポリシーに基づき、
お客様の個人情報を管理いたします。
プライバシーポリシーをご確認の上、次の画面にお進みください。

プライバシーポリシー