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インターネット誹謗中傷

2023.07.04

ビットトレントを利用して発信者情報開示請求されてしまった場合の対応

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執筆者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純

発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。

私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。

この記事を3行でまとめると・・・

ビットトレントで著作物をダウンロードした場合、著作権侵害の法的責任を負う

開示請求を拒否しても、開示されてしまう可能性が極めて高い

多くの事案では、開示請求に同意した上で、示談交渉を行うのが得策であることが多い

発信者情報開示請求とは?

インターネット上の情報送信により、名誉毀損や著作権侵害などがなされた場合、プロバイダに対し、その情報送信の発信者の氏名、住所、連絡先などの開示を請求できる制度です。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)第5条に基づいて行うことができます。

基本的に、ビットトレントで他者の著作物を違法にダウンロード・アップロードした者も、この発信者情報開示請求の対象となります。

ビットトレントの利用について発信者情報開示請求されてしまう仕組み

ビットトレントの仕組み

ビットトレント(BitTorrent)とは、ネットワーク上でP2P方式のファイル共有・交換を行うためのソフトウェアです。ビットトレントでは、「相手(ピア)からファイルの一部を受けとるには、自分もファイルの一部を渡さなければならない」という規則が導入され、特定のファイルをダウンロードするユーザーは、自身がダウンロードしたファイルの一部を、他のユーザーに自動的に送信(アップロード)する仕組みになっています。

また、ビットトレントの利用者は、どのIPアドレスの端末がどのファイルを所持・提供しているかを誰でも容易に知ることができる仕組みになっています。

ビットトレントの利用と発信者情報開示請求

上記のとおり、ビットトレントの利用者であれば、どのIPアドレスの端末がどのファイルを所持・提供しているかを容易に調査できます。

そのため、近時、アダルトビデオの制作会社や、漫画家などの著作権者が、ビットトレントのネットワーク内で行われている海賊版の違法ダウンロード・アップロードを調査し、プロバイダに対して発信者情報開示請求を行うという事例が頻発しています。

発信者情報開示に係る意見照会書とは?

プロバイダ責任制限法上、発信者情報開示請求を受けたプロバイダ(通信会社)は、該当の通信回線を利用した契約者に対し、開示に同意するか否かの回答を求める「意見照会」を行う運用になっています(プロバイダ責任制限法第6条第1項)。

そのため、ビットトレント上で著作物を違法にダウンロード・アップロードした方が、契約しているプロバイダから発信者情報開示に係る意見照会書が届いた、というご報告・ご相談を多数いただいている状況です。

発信者情報開示に係る意見照会書に対しては、大きく分けて3つの対応が考えられます。

開示に同意する、開示を拒否する、意見照会書自体を無視する、の3つです。

開示請求を拒否した場合や、意見照会を無視した場合にどうなるか

開示に同意した場合は、当然、ご自身の氏名、住所、連絡先等が相手方に開示されてしまいます。

情報の開示を受けた相手方は、加害者の特定に成功することになるため、民事訴訟や刑事告訴といった法的措置を講じることが可能になります。

そのため、開示を拒否するか、意見照会自体を無視する、という対応をとりたい、という気持ちになるのは当然です。

しかしながら、ご自身が仮に開示を拒否、または意見照会を無視したとしても、相手方は、プロバイダに対し裁判を提起し、その裁判において著作権侵害の事実が認められることにより、強制的に発信者の氏名、住所等の開示を受けることができます。

ビットトレントにおいて著作物を違法にダウンロード(・アップロード)する行為が著作権侵害に該当することは明らかであるため、仮に開示を拒否、または意見照会を無視したとしても、裁判を通じてご自身の氏名、住所等が相手方に開示されてしまう可能性が極めて高いと思われます。

どのような対応が適切なのか

では、ビットトレントを利用して発信者情報開示請求されてしまった場合、どのような対応がベストなのでしょうか。

結論から申し上げると、ほとんどの事案では、開示請求に同意し、著作権者との間で早期の示談成立を目指すことが得策であると考えられます。

理由としては、後述のとおり、ビットトレントによる著作権侵害には民事責任と刑事責任のリスクがあるため、早期の示談成立による円満な解決が望ましいと考えられるからです。

ビットトレントによる著作権侵害の法的責任

民事責任

先ほどご説明したとおり、ビットトレントを利用し、著作物を違法にダウンロード・アップロードした場合、著作権侵害(複製権、公衆送信権の侵害)に該当し、損害賠償責任(不法行為責任)を負います。

著作権侵害を原因とする損害賠償の賠償額については、次のような枠組みで認定した裁判例があります(東京地方裁判所令和3年8月27日判決、知的財産高等裁判所令和4年4月20日判決)

 

賠償額 = ユーザーがビットトレントの利用を開始してからその利用を停止するまでの間のファイルのダウンロード数 × 著作物の販売単価

 

例えば、単価が800円の著作物があるとして、その著作物が、ビットトレントを利用した期間中に1000回ダウンロードされていたとします。

その場合、1000回×800円=800,000円となるため、損害額は80万円と認定されることになります。

これはあくまで一例ですので、個々の事案でどの程度の損害額が認定されるのかは、ケースバイケースです。

また、発信者情報開示請求を経て発信者を特定した場合、特定するためにかかった弁護士費用や裁判費用についても、全部又は一部が損害として認められることが一般的です。

そのため、上記の例ですと、実際の裁判ではさらに損害額としては高額に認定される可能性もあります

刑事責任

著作権侵害には、民事責任のみならず、刑事責任(著作権侵害罪)も生じ得ます。

著作権侵害罪は親告罪であるため、著作権者が捜査機関に対し刑事告訴をしなければ立件されません。
しかし、逆に言えば、著作権者に悪質な加害者であると判断され刑事告訴されてしまった場合は、立件されてしまう可能性があります。

開示に同意した後、著作権者からどのような請求がくる?

弊所でこれまで担当した事件では、開示に同意した後、著作権者の代理人弁護士から、損害賠償請求の書面が送付されます。

請求される賠償額は、相手方や事案によるため、一概にはいえませんが、概ね高額な請求であることが一般的です。

しかし、相手方の請求が不当に高額なのか、それとも妥当な金額なのかは、著作権法の専門家でなければなかなか判断できないと思います。

また、相手は弁護士をつけてくるため、交渉力にもおのずと差が生じてしまいます。

どのような対応が適切か、まずはご相談ください

以上をまとめますと、ビットトレントで著作物をダウンロードした場合、著作権侵害の法的責任を負うことになりますが、プロバイダからの開示請求を拒否しても、裁判等を経て結局は情報が開示されてしまう可能性が極めて高い状況です。

著作権侵害の法的責任が決して軽いものではないことに照らすと、多くの事案では、開示請求に同意した上で、示談交渉を行うのが得策であることが多いと考えられます。

弊所では、ビットトレントの利用により開示請求されてしまった方のご相談・ご依頼を多数いただいております

また、弊所は発信者情報開示請求をする側の案件も多数経験があり、インターネット上の紛争について多面的な知見からアドバイスができると思います

ビットトレントの利用により開示請求されてしまったら、まずは弊所までご相談ください。

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