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エンターテイメントに関する法務や、インターネットトラブルについて、実務を交えて随時コラムを更新しております。
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インターネット問題

2023.07.16

X(旧Twitter)の投稿者特定

Xは、全世界に数億人のアクティブユーザーがおり、日本でも数千万人が利用している巨大なSNSであり、その分、誹謗中傷の相談が最も多い媒体の一つです。

X上の誹謗中傷被害は、誹謗中傷の投稿、著作権侵害、肖像権侵害、なりすましアカウントの出現等、多岐にわたります。

今回は、誹謗中傷の被害に遭われた際に、どのような手続により投稿者を特定することができるのか、また、投稿者を特定した後の対応について、解説いたします。

CONTENTS

執筆者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純

発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。

私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。

この記事を3行でまとめると・・・

Xの投稿者は、発信者情報開示の裁判手続により特定が可能(ただしDMは対象外)

IPアドレスから投稿者を特定する方法と、電話番号等から投稿者を特定する方法とがある

特定の成功率を高めるためには、入念な事前検討と、スピード感をもった対応が肝心

X(旧Twitter)の投稿者を特定するための手続

発信者情報開示請求

発信者情報開示制度とは、インターネット上の投稿により、名誉毀損や著作権侵害などがなされた場合、プロバイダに対し、投稿者の発信者の氏名、住所、連絡先などの開示を請求できる制度です。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)第5条に基づいて行うことができます。

X上の投稿(ポストなど)も、発信者情報開示制度の対象となるため、投稿の違法性が認められれば、X等に対し発信者情報の開示を請求することができます。

 

発信者情報開示請求が認められるためには、

①対象の投稿によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)、

②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること

の2要件を充足する必要があります。


①対象の投稿によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)
とは、インターネット上の投稿により権利が侵害され、違法性が認められることをいいます。

どのような投稿について権利侵害が認められるのかは、こちらの記事(https://legal-leon.jp/column/516/)で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることとは、発信者情報の開示を受けることが、投稿者に対する損害賠償請求等の法的措置を講じるために必要と認められることをいいます。

発信者情報開示請求をする上では、特に①権利侵害の明白性の要件が争点となります。

どのような投稿であっても発信者の特定ができる、というわけではありませんので、注意が必要です。

ダイレクトメッセージでの誹謗中傷は対象外

ここで注意が必要なのは、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示制度の対象となっているのは、公開の投稿(ポストやアカウントアイコンなど)に限られる点です。

1対1のやりとりであるダイレクトメッセージで侮辱や脅迫をされてしまったというケースでは、発信者情報開示請求を行うことができません

この点は注意が必要です。

これは、発信者情報開示制度の対象である「特定電気通信」(プロバイダ責任制限法第2条第1号)の定義が、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」とされているのが理由です。

「不特定の者によって受信される」とは、投稿の受け手(閲覧者)が特定されていないということ、つまり公開されていて誰でも見ることができる投稿のことを指します。

1対1のやりとりであるダイレクトメッセージは、「不特定の者によって受信されることを目的」としたものではないため、発信者情報開示制度の対象とならないのです。

X(旧Twitter)の投稿に関する発信者情報開示手続

X(旧Twitter)に対する発信者情報開示命令

一般に、インターネット上の投稿記事の投稿者を特定する場合、投稿を行った際の通信の履歴を辿って投稿者を特定します。


インターネット上の通信の履歴は、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」という2つの情報として保存
されています。

そのため、あるサイトで誹謗中傷や著作権侵害の投稿がなされた場合、その投稿が送信された際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」を、サイト運営者から開示してもらいます。

 

ただし、Xでは、個別のポストの「IPアドレス」と「タイムスタンプ」は記録されていません。

その代わりに、対象のアカウントにログインをした際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」が記録されています。

そのため、Xの投稿者を特定する場合、誹謗中傷等を行ったアカウントにログインした際の通信の履歴から、投稿者を特定することになります。

Xに対し対象のアカウントにログインをした際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示請求をするためには、X Corp.を相手方として、「発信者情報開示命令」という裁判を申し立てます。

 

また、Xはアカウント登録型のサイトですので、アカウントに投稿者の情報(電話番号、メールアドレス)が登録されていることがあります。

これらの情報も、Xに対する「発信者情報開示命令」という裁判において開示を請求することができます。

Xからアカウント情報(電話番号、メールアドレス)の開示が受けられれば、弁護士会照会を通じて投稿者を特定できる場合があります。

 

Xに対する「発信者情報開示命令」の裁判で、先ほどご説明した発信者情報開示請求の2要件が認められれば、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」、並びにアカウント情報(電話番号、メールアドレス)の開示を受けることができます。

 

通信会社(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示命令

Xから「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受けた後は、通信会社(NTTドコモ、ソフトバンク、J:COMなど。通常、「アクセスプロバイダ」といいます)に対し、投稿者の氏名、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス)の開示請求を行います。

 

「IPアドレス」と「タイムスタンプ」だけでは、どこの誰が投稿者なのかを外部から調べることはできません。

どこの誰が投稿者なのかを特定するためには、「whois検索」というサービスを使って、実際に通信を媒介した通信会社を調べ、その通信会社に対し、どこの誰が投稿者なのかを開示してもらう必要があります。

そのため、まずは、どの通信会社なのかを調査した上で、「裁判が終了するまで投稿者の情報を消さずに保存しておいてください」という、ログの保存要請を行います。

 

通信会社から、ログの保存作業が完了した旨の連絡があり次第、通信会社に対して「発信者情報開示命令」の裁判を提起します。

この裁判で、発信者情報開示請求の2要件が認められれば、投稿者の氏名、住所、連絡先等の開示を受けることができます

 

以上がXの投稿に関する発信者情報開示手続の概要です。

全体の投稿者特定の流れをまとめると、次の図のようになります。

投稿者の特定に成功した後の対応

投稿者の特定に成功した後は、投稿者に対し損害賠償請求等の措置を講じます。

名誉毀損、侮辱、プライバシー権侵害等の人格権侵害の場合は慰謝料請求、著作権侵害などの財産権侵害の場合は、財産的損害について賠償請求を行います。

 

また、複数の裁判例において、発信者情報開示手続に要した弁護士費用を投稿者に請求することができる、とする判断が下されています。

そのため、上記の慰謝料請求等に加えて、発信者情報開示手続に要した弁護士費用も請求することが一般的です。

また、名誉毀損、侮辱、著作権侵害など、刑事罰の対象となり得るケースでは、投稿者を刑事告訴することもあります。

弊所では刑事告訴の対応も多数行っています。

投稿者が特定できるまでどのくらいの時間がかかる?

結論から申し上げると、ご依頼をいただいてから投稿者を特定するまで、3か月から半年程度かかることが一般的です。

 

ごく稀ではありますが、それぞれの発信者情報開示命令の裁判でプロバイダ側に権利侵害の明白性を強く争われ、審理が長期化するケースなども一部あり、投稿者特定までに半年以上かかってしまうこともあります

このように、裁判手続を経る関係で、どうしても一定程度の期間を要してしまいます。

 

しかしながら、弊所では、スピード感をもった対応を心がけており、類似案件の経験が豊富な分、手続の流れも熟知しているため、1日でも早い投稿者特定のためにベストを尽くしています。

投稿者の特定に失敗するリスク

ここまでXの投稿者特定の流れについて解説してまいりましたが、発信者情報開示という手続は、投稿者の特定を100%成功させられるものではないことに注意が必要です。

特定に失敗してしまうケースとしては、主に以下のような場合があります。

 

・ご依頼いただいた時点で、対象の投稿から長期間経過してしまっている場合

・漫画喫茶や、駅、ホテル、カフェ等の公共Wi-Fiで投稿された場合

・Xの運営会社から開示される情報と、通信会社においてログを特定するのに必要な情報とが噛み合わず、技術的な理由により特定が失敗するケース

 

弊所では、豊富な対応実績を活かして、ご相談いただいた方に「今回の開示請求が失敗するリスクはどの程度あるのか」を、可能な限りわかりやすく説明しています。

できる限りご不安を払拭してご依頼をいただけるよう検討させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

 

X(旧Twitter)の投稿者特定でお困りの場合、まずはご相談ください

以上がXの投稿者特定についての解説です。

Xに対する裁判手続は、申立ての方法や、送達の方法、権利侵害の主張の組み立て方、スピード感など、非常に専門的な知見が求められます。

そのため、経験豊富な弁護士に相談することが重要だと思います。

当事務所では、X上の誹謗中傷事案について、数百件の対応実績がありますので、X上の誹謗中傷でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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