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エンターテイメントに関する法務や、インターネットトラブルについて、実務を交えて随時コラムを更新しております。
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エンタメ・知財法務

2024.06.13

アプリ・ゲームのガチャと景品表示法①〜景品規制の問題〜

現代のアプリ・ゲームには、「ガチャ」の存在が必要不可欠です。

ユーザーは、より強いキャラクター、武器、アイテムを手に入れるためには、ガチャを回す必要があり、これがゲーム会社の売り上げとなります。

今回は、アプリ・ゲームの売上を支える「ガチャ」を実装する上で注意すべき、景品表示法上の景品規制について確認した上で、以前話題となったコンプガチャの問題とポイントを解説いたします。

(なお、ガチャの実装については、表示規制にも注意をする必要があり、こちらは別の記事で解説いたします。)

コンプガチャ問題は、2012年頃加熱して報道されていましたが、現在は収束しています。

しかしながら、ゲームを制作する上では、理解しておくことが必須となります。

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執筆者プロフィール

弁護士法人LEON
代表弁護士 田中 圭祐

大手エンタメコンテンツ会社の法務部に所属していた経験から、
企業法務、知的財産法務、渉外法務の分野を中心に活動しております。
事務所としては、これらの分野に加え、インターネット問題の解決に積極的に取り組んでおります。

ガチャと景品表示法の問題

景品表示法の規制概要

景品表示法とは、「不当景品類及び不当表示防止法」のことで、簡単にいうと、消費者に不利益が生じないように、「景品」に上限を設けたり(景品規制)、消費者を誤認させるような表示を禁止する(表示規制ための法律です。

「景品類」とは、顧客を誘引する手段として、取引に付随して提供する物品や金銭などの経済上の利益をいうと定義されています。

経済上の利益というのは非常に広い意味で、定義告示によれば、金銭、金券、サービス等およそ一切のものを含むと考えられます。

細かい話は、こちらの記事で紹介しておりますので、ご参照ください(https://legal-leon.jp/column/824/)。

ガチャと景品規制の問題

上記の通り、景品類は広範な経済的利益を意味するため、取引に付随して、キャラクター、アイテム、武器等の「データ」を提供する場合、これも景品類に該当することとなります。

そして、景品表示法上、懸賞によって景品類を提供する場合、以下の通り、金額の上限が定められています。

懸賞とは、①くじその他偶然性を利用して定める方法」又は「②特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」によって、景品類の価額を定めることをいいます。

まさにガチャは、①の「くじ」に他なりませんので、懸賞による景品規制が適用されるのではないかという疑問が生じます。

 

多くの場合、ガチャは1回300円程度で回せる設定となっており、「最強」と呼ばれるような人気のキャラクター・アイテムが当たる確率は0.1%あるいはそれ以下に設定されています。

仮に0.1%の確率で排出されるキャラクターであれば、その価値は30万円(300円×1000回=30万円)という話になりそうです。

ガチャで排出されるキャラクターやアイテムが景品類に該当するのであれば、300円で30万円相当のキャラクターが当たるため、景品表示法に違反するのではないかという疑問が生まれます。

 

この点について、消費者庁は、ガチャによって排出されるキャラクターやアイテムそれ自体は、「景品類」には該当しないという公式見解を表明しています。

具体的には、

「一般消費者は、事業者への金銭の支払いと引き換えに有料ガチャを行い、アイテム等何らかの経済上の利益の提供を受けています。つまり、有料のガチャによって一般消費者が得ている経済上の利益は、一般消費者と事業者間の取引の対象そのものであると言えます。言い換えれば、有料ガチャによる経済上の利益は、事業者が有料のガチャとは別の取引を誘引するために、当該取引に付随させて一般消費者に提供しているものではありません。・・・したがって、有料ガチャによって一般消費者が何らかの経済上の利益の提供を受けたとしても、それは景表法上の景品類には該当せず、景品表示法の景品規制は及びません。」

との見解を明示しており、ガチャは、適法だということを明確にしているのです(消費者庁 平成24年5月18日 「オンラインゲームの「コンプガチャ」と景表法の景品規制について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/120518premiums_1.pdf)。

要するに、「ガチャ」によって、排出されるキャラクターやアイテムは、取引に付随するものではなく、取引そのものによってもたらされる経済的利益であるから、「景品類」には当たらないという整理がされたのです。

コンプガチャ問題

背景

2010年頃から、オンライン上のゲームの需要が高まり、従来普及していた家庭用のハードゲームを上回る勢いで需要が拡大していきました。

同時期に普及を始めたスマートフォンの登場や、インターネット環境の整備が要因でしょう。

また、2012年2月20日に「パズル&ドラゴンズ」がリリースされ、大ヒットを記録し、アプリゲームの人気が爆発し、様々な社会問題が引き起こされることとなります。

 

家庭用のハードゲームは、当時買い切りのものばかりで、数千円のソフトを購入すれば、存分に遊ぶことができました。

他方で、オンラインゲームやソーシャルゲームに関しては、上限がなく、いくらでもお金が使えます

クレジットカード決済も可能であり、たかが「ゲーム」「データ」に何万円もお金をつかうなんて信じられないという当時の価値観や、子供が親に無断で親のカードを使用するなどの問題が報道され、これらが相まって、「ガチャ」が大きな社会問題となり、中でも「コンプガチャ」に関する関心が高まりました。

そのような情勢の中で、2012年5月18日、消費者庁が、「オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について」と題する文章を発表し、コンプガチャは違法であるという見解を表明したのです。

コンプガチャとは

コンプガチャとは、ガチャを回して、特定のキャラクターや武器等をコンプリートすると、別のキャラクターや武器等を新たに取得できる仕様のガチャをいいます。

ガチャで、A、B、C、Dのキャラクターを入手すると、Eというより強いキャラクターが手に入るといったものです。

「カード合わせ」の禁止

上記の通り、懸賞の規制は上限の金額が定められていますが、「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組み合わせを提示させる方法を用いた検証による景品類の提供」については、景品類の最高額や総額に関わらず、提供自体が禁止されています(懸賞景品制限告示第5項)。

これが、絵合わせ、字合わせなどと呼ばれる「カード合わせ」による懸賞方法です。

 

例えば、お菓子に一枚のカードが入っている100円の商品があり、全30種類のカードがランダムで入っているとします。

この30種類のカードを全て集めて、お店に持って行くと、特別なカードがもらえるといった商品の販売を禁止するものです。

最初は集めやすいものの、最後の数種類がなかなか集まらず、子供の射倖心を煽り、必要以上に商品を購入してしまう危険があるため禁止されているのです。

確かに、30種類だと最短で30回3000円ですが、30種類を集められる期待値は120回1万2000円ほどとなり、中には、何百回も購入しないと揃えられないという事態が発生するため、消費者被害が発生しそうです。

コンプガチャは違法

コンプガチャは、上記の「カード合わせ」に他なりません。

そして、通常のガチャと異なり、ガチャを複数集めた結果新たにアイテム等がもらえるのであれば、「取引付随性」が認められ、それによってもらえる「アイテム等」は「景品類」に該当することとなります。

したがって、典型なコンプガチャは、景品表示法に抵触し違法であるという結論となります。

「カード合わせに」に該当しない類型と上限突破の仕様

懸賞運用基準において、以下の場合は、「カード合わせ」には該当しないとされています。

ゲーム会社からすれば、消費者保護を図る必要はあるものの、法律に違反しない範囲で消費者の購入意欲を刺激し、できるだけたくさんガチャを回して欲しいというのが本音でしょう。

そのような観点から、様々な仕様が実装されており、特に、③のパターンが多くみられます。

例えば、ガチャの結果、特定のキャラクターが被った場合、二枚の同じキャラクターを合成し、さらにそのキャラクターを強化できるといった、上限突破限界突破などと呼ばれる仕様です。

確かに、上記③に該当するので違法なコンプガチャには当たらないものの、消費者の射倖心を煽っているという側面もあるため、自主規制を行う業界団体等も存在しました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、ゲーム制作に欠かせないガチャと景品表示法の問題について、コンプガチャを題材に解説いたしました。

もっとも、あくまで、一般論となりますので、個別具体的な対応や検討が必要となる場合があります。

ゲームの仕様に関し、疑問が生じた場合は、弁護士等の専門家への相談を強くお勧めいたします。

 

弊所では、数多くのゲーム会社、ウェブサービス運営会社様からご依頼をいただいており、様々なゲームやサービスの仕様に関する法令調査や助言等を行ってまいりました。

問題の仕様について、「これは違法となります」といった回答だけではなく、「こういう仕様にすれば実現できそうだ」「こちらの方が売上にも貢献できるのではないか」など、これまでの経験を踏まえ、個別の案件に応じた、対案の提示や具体的なアドバイスを提供できるよう心がけております。

お気軽にご相談いただけますと幸いです。

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