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エンターテイメントに関する法務や、インターネットトラブルについて、実務を交えて随時コラムを更新しております。
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インターネット問題

2024.07.12

Googleマップのクチコミによる誹謗中傷への対応

地図アプリとして圧倒的なシェアを誇るGoogleマップですが、Googleマップには、単に店舗や施設までの道のりを示すだけでなく、店舗や施設に対するクチコミを投稿する機能があります。

クチコミは、誰であっても匿名で書き込むことができるため、しばしば心無い書き込みや、事実無根の誹謗中傷が投稿されることがあります。

そして、Googleマップのクチコミは、その店舗や施設をGoogleで検索した際に表示されるため、Google検索が広く利用されている現代社会で、否定的なクチコミを掲載された企業等に対するダメージは計り知れません。

当事務所にも、病院・医療クリニックの運営者様を中心に、多数のご相談をいただいております。

今回は、Googleマップのクチコミで誹謗中傷や風評被害の投稿が掲載された際に、どのような対応が考えられるのか、解説いたします。

CONTENTS

執筆者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純

発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。

私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。

この記事を3行でまとめると・・・

Googleマップのクチコミで誹謗中傷された場合の対応は、大きく分けて2パターンある

投稿者が判明していない場合、Googleに対し、発信者情報開示命令の申立てを行う必要がある

特定の成功率を高めるためには、経験豊富な弁護士に依頼することが望ましい

考えられる対応とパターン

Googleマップのクチコミにおいて誹謗中傷や事実と異なる風評被害の書き込みがなされた場合、法的に取りうる対応としては、以下の2パターンに分けられます。

まず、書き込みの内容やアカウント名などから、書き込んだ人物が特定できる場合、書き込んだ本人に対して投稿の削除請求や慰謝料等の損害賠償請求を行うことが考えられます。

もっとも、匿名で利用できるGoogleマップにおいて、書き込みの内容のみから書き込んだ人物を特定できるケースは限られており、誰が書き込んだのかわからないというケースがほとんどです。

また、書き込んだ人物はおおよそ推測できるものの、本人がこれを頑なに認めない、ということもあります。

その場合は、発信者情報開示制度を利用した投稿者の特定と、Googleマップの運営会社に対する投稿記事削除請求の対応が必要となります。

以下では、これらの手続について解説いたしますが、投稿者があらかじめわかっているケースと、発信者情報開示請求を経て投稿者を特定できたケースとは、ほぼ同様の対応となります。

そのため、便宜上、誰が書き込んだのかわからないケースを念頭に置いた解説を最初に行い、そのあとで、投稿者があらかじめわかっているケースと、発信者情報開示請求を経て投稿者を特定できたケースとを併せて、投稿者本人に対する対応として解説させていただきます。

Googleに対する発信者情報開示手続

Googleに対する発信者情報開示請求

一般的に、インターネット上でなされた匿名の投稿の投稿者を特定する場合は、その投稿者が投稿を行った際の通信の履歴から投稿者を特定します。

インターネット上の通信の履歴は、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」という2つの情報として保存されています。

また、Googleのように、投稿者があらかじめアカウントを作成しなければならないプラットフォームでは、アカウントに登録された情報の中に、本人の住所や電話番号、メールアドレスなど、本人の特定に繋がる情報が含まれている可能性があります。

そのため、Googleマップのクチコミの投稿者を特定する場合、誹謗中傷の投稿を行った際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」や、アカウントに登録された本人の情報から、投稿者を特定することになります。

これらの情報はいずれも、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆるプロバイダ責任制限法)において「発信者情報」と定義されています。

 

Googleマップの運営会社である米国法人Google LLC(グーグルエルエルシー)からGoogleマップのクチコミ投稿者の「発信者情報」の開示を受けるためには、Google LLCに対して、「発信者情報開示命令」という裁判を申し立てます。

裁判においてこちらの発信者情報の開示が認められるためには、

①対象の投稿によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)

②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること

の2要件を充足する必要があります。

 

①対象の投稿によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)とは、インターネット上の投稿により権利が侵害され、違法性が認められることをいいます。どのような投稿について権利侵害が認められるのかは、こちらの記事(https://legal-leon.jp/column/516/)で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることとは、発信者情報の開示を受けることが、投稿者に対する損害賠償請求等の法的措置を講じるために必要と認められることをいいます。

 

発信者情報開示請求をする上では、特に①権利侵害の明白性の要件が争点となります。

どのような投稿であっても発信者の特定ができる、というわけではありませんので、注意が必要です。

Googleに登録されたアカウント情報が本人の身元に繋がる情報だった場合

Google LLCから開示された発信者情報の中に、電話番号など、投稿者本人の身元に繋がる情報が含まれる場合は、基本的にこの時点で投稿者の特定が完了します。

電話番号や一部のメールアドレスについては、いわゆる弁護士会照会を経て、投稿者本人の氏名、住所を特定することが可能です。

もっとも、電話番号が登録されていなかったり、メールアドレスもいわゆるフリーアドレス(Googleの場合はGmailアドレスが開示されることがほとんどです)だった場合、次に解説する手続を実施する必要があります。

通信会社(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示命令

Google LLCから開示された発信者情報だけでは投稿者本人の特定ができない場合、Googleから開示された「IPアドレス」と「タイムスタンプ」をもとに、通信会社(NTTドコモ、ソフトバンク、J:COMなど。通常、「アクセスプロバイダ」といいます)に対し、投稿者の氏名、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス)の開示請求を行うことになります。

「IPアドレス」と「タイムスタンプ」だけでは、どこの誰が投稿者なのかを外部から調べることはできません。

どこの誰が投稿者なのかを特定するためには、「whois検索」というサービスを使って、実際に通信を媒介した通信会社を調べ、その通信会社に対し、どこの誰が投稿者なのかを開示してもらう必要があります。

そのため、Google LLCから「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受けた後、アクセスプロバイダに対して、改めて発信者情報開示命令の裁判を提起します。

この裁判で、発信者情報開示請求の2要件が認められれば、投稿者の氏名、住所、連絡先等の開示を受けることができます。

 

以上がGoogleマップのクチコミに関する発信者情報開示手続の概要です。

全体の投稿者特定の流れをまとめると、次の図のようになります。

Googleに対する投稿記事削除請求

ここまで投稿者本人を特定するための手続を解説してきましたが、弁護士に依頼をしてから投稿者本人を特定できるまで、最低でも2か月以上はかかると思います。

そしてその間、誹謗中傷のクチコミはインターネット上で全世界に公開され続けるため、イメージの悪化や顧客離れといった損害は日に日に拡大していきます。

このような損害の発生を食い止めるためには、投稿自体を削除する必要があります。

そして、投稿者本人を特定する前に、Google自体に対して投稿を削除するよう求める手続が、裁判手続として用意されています。

これを「投稿記事削除仮処分」といいます。

 

投稿記事削除仮処分では、名誉毀損等の理由により投稿に違法性が認められる場合に、裁判所を通じて、当該投稿の削除をプラットフォームの運営者であるGoogle LLCに直接命じることができます。

これが認められるための要件は、発信者情報開示請求の要件である権利侵害の明白性とほぼ同様です。

注意点としては、この「仮処分手続」を利用し削除命令を獲得する際、「担保金」というお金を法務局に「供託」(預ける)しなければなりません

投稿の件数などにもよりますが、投稿記事削除仮処分の担保金額は30万円〜となります。

仮処分手続を利用して投稿の削除を求める場合は、あらかじめ準備しておく必要がありますのでご注意ください。

なお、供託した担保金は、一定期間後に取り戻すことが可能です。

これまで弊所で担当した全てのケースで、供託した担保金は全額戻ってきています。

投稿者の特定に成功した後の対応

投稿者の特定に成功した後は、投稿者に対し損害賠償請求等の措置を講じます。

また、あらかじめ投稿者がわかっているケースでは、この段階で投稿者へ投稿の削除請求も行うことになります。

慰謝料や開示にかかった弁護士費用の請求

名誉毀損、侮辱、プライバシー権侵害等の人格権侵害に該当する誹謗中傷は、慰謝料請求の対象となります。

また、複数の裁判例において、発信者情報開示手続に要した弁護士費用を投稿者に請求することができる、とする判断が下されています。

そのため、上記の慰謝料請求等に加えて、発信者情報開示手続に要した弁護士費用も請求することが一般的です。

刑事告訴

また、名誉毀損、侮辱など、刑事罰の対象となり得るケースでは、投稿者を刑事告訴することもあります。弊所では刑事告訴の対応も多数行っています。

投稿者が特定できるまでにかかる時間

結論から申し上げますと、弁護士への依頼から投稿者を特定するまで、3か月から半年程度かかることのが通常です。

複数の裁判手続を経る関係で、どうしても、一定程度の期間を要してしまうのが実情です。

しかしながら、弊所では、類似案件の経験が豊富な分、手続の流れも熟知しているため、他の事務所と比較してスピード感をもった対応が可能となっております。

投稿者の特定に失敗するリスク

Googleマップの投稿者特定の流れについて解説して参りましたが、発信者情報開示という手続は、投稿者を確実に特定できるものではないことに注意が必要です。

特定に失敗してしまうケースとしては、主に以下のような場合があります。

・ご依頼いただいた時点で、対象の投稿から長期間経過してしまっている場合

・漫画喫茶や、駅、ホテル、カフェ等の公共Wi-Fiで投稿された場合

・通信会社の内部事情により、対象の通信が特定できず、失敗するケース

 

弊所では、豊富な対応実績を活かして、ご相談いただいた方に「今回の開示請求が失敗するリスクはどの程度あるのか」を、可能な限りわかりやすく説明しています。

できる限りご不安を払拭してご依頼をいただけるよう検討させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

Googleマップのクチコミでの誹謗中傷でお困りの場合、まずはご相談ください

以上、Googleマップのクチコミでの誹謗中傷に対する対応についての解説でした。

Google LLCを相手方とする裁判手続は、申立ての方法や、送達の方法、権利侵害の主張の組み立て方、スピード感など、非常に専門的な知見が求められます。

そのため、経験豊富な弁護士に相談することが重要だと思います。

 

当事務所では、Googleマップのクチコミでの誹謗中傷事案について、多数の対応実績があります。

特に、病院・医療クリニックの運営者様からたくさんのご相談をいただいており、日々問題解決に尽力しております。

Googleマップのクチコミでの誹謗中傷でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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