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エンターテイメントに関する法務や、インターネットトラブルについて、実務を交えて随時コラムを更新しております。
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インターネット問題

2024.08.23

インスタグラム(Instagram)の投稿者特定

画像や動画を投稿し、若者を中心に非常に多くのアクティブユーザー数を誇るSNSである「インスタグラム(Instagram)」。

芸能活動や配信活動を行っているインフルエンサーの方々もほとんどが個人のInstagramアカウントを保有しており、またInstagramアカウントを自社HPの代わりとして利用している企業や店舗も数多く存在します。

普段はキラキラしたイメージのInstagramでも、通常の投稿、ストーリーズ、コメント欄などで、匿名での誹謗中傷が相次いで発生しています。

また、Instagramでなりすましアカウントをつくられてしまった、というご相談も数多くいただきます。

今回は、Instagram上の書き込みで誹謗中傷されてしまった場合に、加害者を特定するための流れについて、解説いたします。

CONTENTS

執筆者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純

発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。

私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。

この記事を3行でまとめると・・・

Instagramの投稿者は、発信者情報開示請求により特定することが可能(ただしDMは対象外)

IPアドレスから投稿者を特定する方法と、電話番号等から投稿者を特定する方法とがある

投稿から24時間で消えてしまう「ストーリーズ」など、特殊な側面があるため注意が必要

インスタグラム(Instagram)の投稿者を特定するための手続

発信者情報開示制度について

発信者情報開示制度とは、インターネット回線を通じてなされた匿名の投稿により権利が侵害された場合、投稿者(発信者)の氏名、住所、連絡先などの開示を請求できる制度です。特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)第5条に基づいて行うことができます。

インスタグラム(Instagram)上の投稿(投稿、コメント、ストーリーズなど)も、発信者情報開示制度の対象となるため、投稿の違法性が認められれば、運営会社であるMeta社に対し発信者情報の開示を請求することができます。

発信者情報開示請求が認められるためには、次の2要件を充足する必要があります。

すなわち、侵害情報の流通によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること、です。

 

①権利侵害の明白性とは、インターネット上の投稿により権利が侵害され、かつ、違法性が認められることをいいます。

②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることとは、発信者情報の開示を受けることが、投稿者に対する損害賠償請求等の法的措置を講じるために必要と認められることをいいます。

 

発信者情報開示請求をする上では、特に①権利侵害の明白性の要件が争点となります。

違法性が認められない投稿については、投稿者を特定することができませんので、注意が必要です。

ダイレクトメッセージでの誹謗中傷は対象外

ここで注意が必要なのは、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示制度の対象となっているのは、公開の投稿に限られ、1対1のやりとりであるダイレクトメッセージは対象から除外されている点です(プロバイダ責任制限法第2条第1号)。

ダイレクトメッセージにおいて侮辱や脅迫をされてしまったというケースでは、発信者情報開示請求を行うことができません。この点は注意が必要です。

※ダイレクトメッセージは、受け取る相手を特定した上で送信されるため、「不特定の者によって受信されることを目的とする」に該当しません。

Instagramの投稿についての発信者情報開示手続

Instagramの運営会社に対する発信者情報開示請求

インターネット上の投稿記事の投稿者を特定する場合、投稿を行った際の通信の履歴を辿って投稿者を特定する必要があります。

インターネット上の通信の履歴は、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」という2つの情報として保存されています。

そのため、通常は、特定のサイトで誹謗中傷の投稿がなされた場合、その投稿が送信された際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受ける必要があります。

ただし、Instagramの内部では、個別の投稿やストーリーズの「IPアドレス」と「タイムスタンプ」は記録されていません。

その代わりに、対象のアカウントにログインをした際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」が記録されています。

そのため、Instagramの投稿者を特定する場合、誹謗中傷等を行ったアカウントにログインした際の通信の履歴から、投稿者を特定することになります。

 

また、Instagramはアカウント登録型のサイトですので、アカウントを作成する際、投稿者は、自身の情報(電話番号、メールアドレス)を登録しなければなりません。

これらの登録された情報も、Instagramに開示を請求することができます。

Instagramに対する発信者情報開示請求の裁判で、先ほどご説明した発信者情報開示請求の2要件が認められれば、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」、並びにアカウント情報(電話番号、メールアドレス)の開示を受けることができます。

Instagramから開示を受けることができた発信者情報の中に、投稿者の特定に直接つながる情報(電話番号やメールアドレスなど)があれば、その時点で基本的に投稿者の特定は完了します。

投稿者の特定に直接つながる情報の開示が受けられなかった場合は、次に解説する通信会社(アクセスプロバイダ)への発信者情報開示請求の手続へと移行します。

通信会社(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示請求

Instagramから開示を受けた「IPアドレス」を調べると、投稿者がどの通信会社(NTTドコモ、ソフトバンク、J:COMなど。通常、「アクセスプロバイダ」といいます)を使って投稿したのかがわかります。

そうすると、次に、判明した通信会社に対し、投稿者の氏名、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス)の開示請求を行います。

「IPアドレス」と「タイムスタンプ」だけでは、どこの誰が投稿者なのかを外部から調べることはできません。

どこの誰が投稿者なのかを特定するためには、通信会社からどこの誰が投稿者なのかを開示してもらう必要があります。

通信会社への開示請求は、通常、「発信者情報開示命令」という裁判手続を利用します。

この裁判で、発信者情報開示請求の2要件が認められれば、投稿者の氏名、住所、連絡先等の開示を受けることができます。

以上がInstagramの投稿に関する発信者情報開示手続の概要です。

全体の投稿者特定の流れをまとめると、次の図のようになります。

Instagramの「ストーリーズ」の投稿者を特定したい場合の注意点

Instagramでは、投稿してから24時間で非表示になってしまう「ストーリーズ」という投稿機能があります。

このストーリーズは、アーカイブに保存されていれば、24時間を超えても見ることができるのですが、アーカイブに保存されていない場合、24時間経つと消えてしまいます。

そのため、弊所へご相談をいただいた時点では、投稿が消えてしまっており、対応が困難となってしまうケースがあります。

「ストーリーズ」の投稿者特定をご検討の場合、投稿されてから24時間が経過する前に、投稿のスクリーンショット(できれば、PCから投稿のURLがわかる形で保存していただくと確実です)を残しておいていただければと思います。

投稿者の特定に成功した後の対応

投稿者の特定に成功した後は、投稿者に対し損害賠償請求等の措置を講じます。

また、あらかじめ投稿者がわかっているケースでは、この段階で投稿者へ投稿の削除請求も行うことになります。

慰謝料や開示にかかった弁護士費用の請求

名誉毀損、侮辱、プライバシー権侵害等の人格権侵害に該当する誹謗中傷は、慰謝料請求の対象となります。

また、複数の裁判例において、発信者情報開示手続に要した弁護士費用を投稿者に請求することができる、とする判断が下されています。

そのため、上記の慰謝料請求等に加えて、発信者情報開示手続に要した弁護士費用も請求することが一般的です。

刑事告訴

また、名誉毀損、侮辱など、刑事罰の対象となり得るケースでは、投稿者を刑事告訴することもあります。

弊所では刑事告訴の対応も多数行っています。

投稿者が特定できるまでにかかる時間

結論から申し上げますと、弁護士への依頼から投稿者を特定するまで、3か月から半年程度かかることが通常です。

複数の裁判手続を経る関係で、どうしても、一定程度の期間を要してしまうのが実情です。

しかしながら、弊所では、類似案件の経験が豊富な分、手続の流れも熟知しているため、他の事務所と比較してスピード感をもった対応が可能となっております。

投稿者の特定に失敗するリスク

Instagramの投稿者特定の流れについて解説して参りましたが、発信者情報開示という手続は、投稿者を確実に特定できるものではないことに注意が必要です。

特定に失敗してしまうケースとしては、主に以下のような場合があります。

 

・ご依頼いただいた時点で、対象の投稿から長期間経過してしまっている場合

・漫画喫茶や、駅、ホテル、カフェ等の公共Wi-Fiで投稿された場合

・通信会社の内部事情により、対象の通信が特定できず、失敗するケース

 

弊所では、豊富な対応実績を活かして、ご相談いただいた方に「今回の開示請求が失敗するリスクはどの程度あるのか」を、可能な限りわかりやすく説明しています。

できる限りご不安を払拭してご依頼をいただけるよう検討させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

Instagramでの誹謗中傷でお困りの場合、まずはご相談ください

以上、Instagramでの誹謗中傷に対する対応についての解説でした。

Instagramを相手方とする裁判手続は、申立ての方法や、権利侵害の主張の組み立て方、スピード感など、非常に専門的な知見が求められます。

そのため、経験豊富な弁護士に相談することが重要だと思います。

当事務所では、Instagramでの誹謗中傷事案について、多数の対応実績があります。

Instagramでの誹謗中傷でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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