インターネット問題
2024.12.12
5ちゃんねる(5ch)で誹謗中傷されてしまった場合の対応
5ちゃんねる(5ch)は、1999年に開設された、国内最大規模の電子掲示板サイトで、ニュース、世界情勢、スポーツ、ゲームなど、分野ごとに膨大な数の掲示板があり、それぞれの話題ごとに細分化したスレッドが立てられています。
元々は、「2ちゃんねる」(2ch)という名称でしたが、2014年に管理者が変わり、その後「5ちゃんねる」という名称になりました。
5ちゃんねるは、ユーザー登録等が不要で、誰であっても匿名で利用できる掲示板ですが、運営会社側で、全ての投稿についてIPアドレスが記録されています。
今回は、そんな5ちゃんねるで誹謗中傷の被害に遭ってしまった場合に、どのような対応が考えられるのか、解説いたします。
CONTENTS
執筆者プロフィール
弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純
発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。
私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。
この記事を3行でまとめると・・・
5ちゃんねるの投稿者は、発信者情報開示請求により特定することが可能
5ちゃんねるの投稿を削除したい場合、原則的には削除仮処分の裁判を申し立てる必要がある
5ちゃんねるは海外法人が運営しているため、特殊な実務対応が求められる
5ちゃんねるで誹謗中傷されてしまった場合にとれる対応
5ちゃんねる上の書き込みで誹謗中傷されてしまった場合、どういった対応が取れるでしょうか。
投稿者の特定及び損害賠償請求
誹謗中傷を行った加害者に対し、慰謝料などの損害賠償を請求したいという場合、まずは加害者の身元(氏名、住所等)を特定する必要があります。
冒頭でも申し上げたとおり、5ちゃんねるは匿名で利用できるインターネット掲示板ですが、運営会社側で、全ての投稿についてIPアドレスが記録されています。
そのため、発信者情報開示手続を利用することで、加害者の身元を特定することができます。
投稿の削除請求
また、5ちゃんねる上で、店舗に関する悪評や、個人情報の無断掲載、前科などに関する情報が書き込まれてしまうこともあります。
そういった場合、速やかに投稿を削除し、被害の拡大を防止する必要があります。
また、5ちゃんねるに立てられたスレッド自体が違法性を有する場合、スレッド自体を削除できる場合もあります。
誹謗中傷に該当し違法性が認められるかどうかの判断
なお、そもそもどのような書き込みが誹謗中傷に当たるのかは、こちらの記事で解説していますので、併せてご覧ください。
いずれにしても、投稿に違法性が認められるかや、開示・削除請求が可能どうかは、専門性の高い法的判断が必要となるため、まずはお気軽にご相談ください。
5ちゃんねるの運営会社
5ちゃんねるは、日本人向けの電子掲示板ですが、運営会社は「Loki Technology, Inc.」という、フィリピン法人です。
そのため、5ちゃんねるに対する裁判手続は、日本国内の法人が運営するサイトと異なり、提出書面の英訳や、海外送達などの、特殊な運用が必要となります。
5ちゃんねるの投稿者を特定するための手続
発信者情報開示請求
発信者情報開示制度とは、インターネット上の投稿により、権利が侵害されたことが明らかである場合、サイト運営者やプロバイダに対し、IPアドレスや、投稿者の発信者の氏名、住所、連絡先などの発信者情報の開示を請求できる制度です。
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)第5条に基づいて行うことができます。
5ちゃんねるの投稿(レス)も、発信者情報開示制度の対象となるため、投稿によって権利が侵害されたことが認められれば、5ちゃんねるの運営会社に対し、発信者情報の開示を請求することができます。
発信者情報開示請求が認められるための主な要件は、①対象の投稿によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)、②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること、の2つです。
①対象の投稿によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)とは、インターネット上の投稿により権利が侵害され、違法性が認められることをいいます。
②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることとは、発信者情報の開示を受けることが、投稿者に対する損害賠償請求等の法的措置を講じるために必要と認められることをいいます。
発信者情報開示請求をする上では、特に①権利侵害の明白性の要件が争点となります。
どのような投稿であっても発信者の特定ができる、というわけではありませんので、注意が必要です。
5ちゃんねるの投稿に関する発信者情報開示手続
5ちゃんねるの運営会社に対する発信者情報開示仮処分
一般に、インターネット上の投稿記事の投稿者を特定する場合、投稿を行った際の通信の履歴を辿って投稿者を特定します。
インターネット上の通信の履歴は、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」という2つの情報として保存されています。
そのため、あるサイトで誹謗中傷の投稿がなされた場合、その投稿が送信された際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」を、サイト運営者から開示してもらいます。
5ちゃんねるの投稿者を特定する場合も、誹謗中傷の投稿を行った際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」から、投稿者を特定することになります。
通常、発信者情報開示請求の方法には、任意での開示請求の方法と、裁判による開示請求の方法とがあります。
しかし、5ちゃんねるに関しては、捜査機関又は裁判所の命令によらない限り、任意での開示請求には応じないことが明言されています。
そのため、5ちゃんねる上の投稿を行った際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示請求をするためには、5ちゃんねるの運営会社である「Loki Technology, Inc.」を相手方として、「発信者情報開示仮処分」という裁判を申し立てる必要があります。
そのほか、上述のとおり、フィリピン法人である5ちゃんねるの運営会社に対する発信者情報開示仮処分の申立てには、申立書の英訳、海外送達など、特殊な対応や準備が必要となる部分が数多くあります。
対応実績に乏しいと、投稿者を特定するまでに余計な時間がかかってしまい、後述するような投稿者失敗のリスクが高まってしまいます。
5ちゃんねるの投稿者特定をご検討の場合は、対応実績が豊富な事務所に依頼されることをお勧めします。
5ちゃんねるに対する発信者情報開示仮処分を申し立てる際の注意点
上述のとおり、5ちゃんねるからIPアドレス等を開示してもらうためには、発信者情報開示仮処分という裁判を申し立てる必要がありますが、この「仮処分」という裁判では、発令時に「担保金」というお金を法務局に供託(一時的に預ける)する必要があります。
「担保金」とは、違法な保全命令または保全執行によって、債務者に損害が生じた場合に、債務者の損害賠償請求権を担保するための金銭で、最終的には取戻手続が用意されています。
弁護士に依頼する際の報酬に加え、担保金もご依頼者様に用意していただく必要がありますので、注意が必要です。
なお、開示仮処分における担保金の相場は10万円〜となっています(投稿数や投稿の内容によって変わる場合があります)。
通信会社(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示命令
5ちゃんねるから「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受けた後は、通信会社(NTTドコモ、ソフトバンク、J:COMなど。通常、「アクセスプロバイダ」といいます)に対し、投稿者の氏名、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス)の開示請求を行います。
「IPアドレス」と「タイムスタンプ」だけでは、どこの誰が投稿者なのかを外部から調べることはできません。
どこの誰が投稿者なのかを特定するためには、「whois検索」というサービスを使って、実際に通信を媒介した通信会社を調べ、その通信会社に対し、どこの誰が投稿者なのかを開示してもらう必要があります。
そのため、まずは、どの通信会社なのかを調査した上で、裁判が終了するまで投稿者の情報を消さずに保存しておくように、ログの保存要請を行います。
通信会社から、ログの保存作業が完了した旨の連絡があり次第、通信会社に対して「発信者情報開示命令」の裁判を提起します。
この裁判で、発信者情報開示請求が認められれば、投稿者の氏名、住所、連絡先等の開示を受けることができます。
なお、通信会社に対する発信者情報開示請求は、5ちゃんねるに対して用いていた「仮処分」という手続ではなく、「非訟事件手続」という特殊な手続を用います。
これは、令和4年10月から改正プロバイダ責任制限法が施行されたことにより、新たに創設された手続で、仮処分と異なり、担保金の供託が不要です。
以上が5ちゃんねるの投稿に関する発信者情報開示手続の概要です。
全体の投稿者特定の流れをまとめると、次の図のようになります。
者の特定に成功した後の対応
投稿者の特定に成功した後は、投稿者に対する損害賠償請求を行います。
名誉毀損、侮辱等の人格権侵害に該当する誹謗中傷は、慰謝料請求の対象となります。
また、複数の裁判例において、発信者情報開示手続に要した弁護士費用を投稿者に請求することができる、とする判断が下されています。そのため、上記の慰謝料請求等に加えて、発信者情報開示手続に要した弁護士費用も請求することが一般的です。
また、名誉毀損、侮辱など、刑事罰の対象となり得るケースでは、投稿者を刑事告訴することもあります。弊所では刑事告訴の対応も多数行っています。
投稿者が特定できるまでどのくらいの時間がかかる?
結論から申し上げると、ご依頼をいただいてから投稿者を特定するまで、3か月から6か月程度かかることが一般的です。
複数の裁判手続を経る関係で、どうしても、一定程度の期間を要してしまうのが実情です。
しかしながら、弊所では、類似案件の経験が豊富な分、手続の流れも熟知しているため、他の事務所と比較してスピード感をもった対応が可能となっております。
投稿者の特定に失敗するリスク
ここまで5ちゃんねるの投稿者特定の流れについて解説して参りましたが、発信者情報開示という手続は、確実に投稿者を特定できるとは限らないことに注意が必要です。
特定に失敗してしまうケースとしては、主に以下のような場合があります。
・ご依頼いただいた時点で、対象の投稿から長期間経過してしまっている場合
・漫画喫茶や、駅、ホテル、カフェ等の公共Wi-Fiで投稿された場合
・通信会社の内部事情により、対象の通信が特定できず、失敗するケース
弊所では、豊富な対応実績を活かして、ご相談いただいた方に「今回の開示請求が失敗するリスクはどの程度あるのか」を、可能な限りわかりやすく説明しています。
できる限りご不安を払拭してご依頼をいただけるよう検討させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
5ちゃんねる上の投稿の削除請求の方法
5ちゃんねる上の投稿記事の削除は、投稿者の開示請求と並行して進めることも可能です。なお、投稿者の開示請求はせず、投稿の削除だけ行うことも可能です。
5ちゃんねる上の投稿の削除を行う方法としては、①任意削除請求の方法と、②仮処分手続(裁判手続)による方法との、2パターンが存在しますが、開示請求と同様、①の任意削除に関しては、原則的に対応してもらえていません。
そのため、対象の投稿を確実に削除したい場合、「投稿記事削除仮処分」という裁判手続を申し立てることで、削除が可能です。
この裁判手続も、開示請求と同様、「仮処分」という手続を利用しますので、「担保金」の供託が必要です。なお、削除仮処分の担保金の相場は、30万円〜となっています。
5ちゃんねる上の誹謗中傷でお困りの場合、お気軽にご相談ください
以上、5ちゃんねる上で誹謗中傷されてしまった場合の対応についての解説でした。
5ちゃんねる上の投稿記事は、運営会社側でIPアドレスが記録されていますが、海外法人を相手方にする関係上、送達の方法など、運用に特殊な面が存在します。
そのため、経験豊富な弁護士に相談していただいた方が、成功率が高まります。
当事務所では、5ちゃんねる上の誹謗中傷事案について、多数の対応実績がありますので、5ちゃんねる上の誹謗中傷でお困りの方は、お気軽にご相談ください。