インターネット問題
2024.10.25
ホストラブ(ホスラブ)で誹謗中傷された場合の対応
ホストラブ(以下では「ホスラブ」といいます)とは、匿名インターネット掲示板であり、キャバクラ、ホストクラブ、風俗店といったナイトワークに特化しているのが特徴です。
月間200万人の利用者数(ホスラブ公式調べ)を誇る、人気の掲示板です。
ホスラブは、ナイトワークに関する情報交換やクチコミの投稿などが多数投稿されていますが、匿名で利用できるという性質もあり、顧客や同業者から、根も葉もない噂や悪口が多数書き込まれています。
今回は、ホスラブ上の書き込みで誹謗中傷されてしまった場合に、どういった対応が可能なのかについて、解説いたします。
CONTENTS
執筆者プロフィール
弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純
発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。
私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。
この記事を3行でまとめると・・・
ホスラブの投稿者は、発信者情報開示請求により特定することが可能
ホスラブの投稿を削除したい場合、任意削除の方法と、裁判による削除の方法がある
ホスラブの運営会社は非公表のため、対応実績のある弁護士でなければ対処が難しい
ホスラブで誹謗中傷されてしまった場合にとれる対応
ホスラブ上の書き込みで誹謗中傷されてしまった場合、どういった対応が取れるでしょうか。
投稿者の特定及び慰謝料などの請求
誹謗中傷を行った加害者に対し、慰謝料を請求したり、二度と誹謗中傷をしないよう誓約させたい、という場合、まずは加害者の身元を特定する必要があります。
ホスラブは匿名で利用できるインターネット掲示板ですので、加害者の身元特定には発信者情報開示手続を利用する必要があります。
投稿の削除請求
また、ホスラブは、ナイトワーク関連のお店を利用するたくさんの顧客が利用しており、ホスラブ上に事実無根の噂や悪口が書き込まれた場合、顧客離れによる売上減少という被害が生じることが多いです。
また、ナイトワーク関連のお仕事をされている方の実名や、家族・恋人の有無など、公開していないプライバシー情報が晒されてしまうこともあります。
そういった場合、速やかに投稿を削除し、被害の拡大を防止する必要があります。
誹謗中傷に該当し違法性が認められるかどうかの判断
なお、そもそもどのような書き込みが誹謗中傷に当たるのかは、こちらの記事で解説していますので、併せてご覧ください。
いずれにしても、投稿に違法性が認められるかどうかは、専門性の高い法的判断が必要となるため、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
ホスラブの投稿者を特定するための手続
発信者情報開示手続について
発信者情報開示手続とは、インターネット回線を通じてなされた匿名の投稿により権利が侵害された場合、投稿者(発信者)の氏名、住所、連絡先などの開示を請求できる手続です。
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任制限法」)第5条に基づいて行うことができます。
ホスラブ上の投稿は、発信者情報開示手続の対象となるため、投稿の違法性が認められれば、運営会社に対し発信者情報の開示を請求することができます。
発信者情報開示請求が認められるための要件は、次の2つです。
すなわち、①侵害情報の流通によって権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)、②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること、です。
①権利侵害の明白性とは、インターネット上の投稿により権利が侵害され、かつ、違法性が認められることをいいます。
②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることとは、発信者情報の開示を受けることが、投稿者に対する損害賠償請求等の法的措置を講じるために必要と認められることをいいます。
発信者情報開示請求をする上では、特に①権利侵害の明白性の要件が争点となります。
違法性が認められない投稿については、投稿者を特定することができませんので、注意が必要です。
ホスラブの運営会社に対する発信者情報開示請求
インターネット上の投稿記事の投稿者を特定する場合、投稿を行った際の通信の履歴を辿って投稿者を特定する必要があります。
インターネット上の通信の履歴は、「IPアドレス」と「タイムスタンプ」という2つの情報として保存されています。
そのため、通常は、特定のサイトで誹謗中傷の投稿がなされた場合、その投稿が送信された際の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受ける必要があります。
ホスラブでは、それぞれの投稿について、投稿がなされた際のIPアドレスとタイムスタンプが記録されていますので、ホスラブの運営会社に対してこれらの情報の開示を請求することができます。
ホスラブの運営会社からこれらの情報の開示を受けた後は、次に解説する通信会社(アクセスプロバイダ)への発信者情報開示請求の手続へと移行します。
通信会社(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示請求
ホスラブの運営会社から開示を受けた「IPアドレス」を調べると、投稿者がどの通信会社(NTTドコモ、ソフトバンク、J:COMなど。通常、「アクセスプロバイダ」といいます)を使って投稿したのかがわかります。
そうすると、次に、判明した通信会社に対し、投稿者の氏名、住所、連絡先(電話番号、メールアドレス)の開示請求を行います。
「IPアドレス」と「タイムスタンプ」だけでは、どこの誰が投稿者なのかを外部から調べることはできません。
どこの誰が投稿者なのかを特定するためには、通信会社からどこの誰が投稿者なのかを開示してもらう必要があります。
通信会社への開示請求は、通常、「発信者情報開示命令」という裁判手続を利用します。
この裁判で、発信者情報開示請求の2要件が認められれば、投稿者の氏名、住所、連絡先等の開示を受けることができます。
以上がホスラブの投稿に関する発信者情報開示手続の概要です。
全体の投稿者特定の流れをまとめると、次の図のようになります。
投稿者の特定に成功した後の対応
投稿者の特定に成功した後は、投稿者に対し損害賠償請求等の措置を講じます。
慰謝料や開示にかかった弁護士費用の請求
名誉毀損、侮辱、プライバシー権侵害等の人格権侵害に該当する誹謗中傷は、慰謝料請求の対象となります。
また、複数の裁判例において、発信者情報開示手続に要した弁護士費用を投稿者に請求することができる、とする判断が下されています。
そのため、上記の慰謝料請求等に加えて、発信者情報開示手続に要した弁護士費用も請求することが一般的です。
刑事告訴
また、名誉毀損、侮辱など、刑事罰の対象となり得るケースでは、投稿者を刑事告訴することもあります。
弊所では刑事告訴の対応も多数行っています。
投稿者が特定できるまでにかかる時間
結論から申し上げますと、弁護士への依頼から投稿者を特定するまで、3か月から半年程度かかることが通常です。
複数の裁判手続を経る関係で、どうしても、一定程度の期間を要してしまうのが実情です。
しかしながら、弊所では、類似案件の経験が豊富な分、手続の流れも熟知しているため、他の事務所と比較してスピード感をもった対応が可能となっております。
投稿者の特定に失敗するリスク
ホスラブの投稿者特定の流れについて解説して参りましたが、発信者情報開示手続は、確実に投稿者を特定できるものではないことに注意が必要です。
特定に失敗してしまうケースとしては、主に以下のような場合があります。
・漫画喫茶や、駅、ホテル、カフェ等の公共Wi-Fiで投稿された場合
・通信会社の内部事情により、対象の通信が特定できず、失敗するケース
弊所では、豊富な対応実績を活かして、ご依頼をいただく前に「今回の開示請求が失敗するリスクはどの程度あるのか」を、可能な限りわかりやすく説明させていただいております。
できる限りご不安を払拭してご依頼をいただけるよう検討させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
ホスラブ上の投稿の削除請求の方法
投稿者の開示請求と並行して、ホスラブ上の投稿の削除請求の手続も進めることが可能です。
なお、投稿者の開示請求はせず、投稿の削除だけ行うことも可能です。
ホスラブ上の投稿の削除を行う方法としては、①任意削除請求の方法と、②仮処分手続(裁判手続)による方法との、2パターンが存在します。
任意削除請求
ホスラブ上の投稿の削除請求を行う場合、ホスラブの運営会社に対して、任意で投稿を削除するよう請求することが考えられます。
任意削除のメリットとしては、裁判手続を経ずに済むため、削除までにかかる期間が早い、という点が挙げられます。
また、手続も簡便で済むため、コストも抑えられることが多いです。
ただし、あくまで投稿を消すかどうかは、ホスラブ運営会社側の判断となるため、強制力に欠ける、というデメリットがあります。
投稿記事削除仮処分による削除
他方で、対象の投稿を強制的に削除したい場合、「投稿記事削除仮処分」という裁判手続を申し立てることで、削除が可能です。
この「仮処分手続」というのは、通常の民事訴訟よりも手続を簡略化することにより、スピーディーに事件を処理することができる手続となっています。
手続の効力としては、民事訴訟と同じような効果が得られるため、裁判所に投稿の違法性を認めてもらえれば、強制的に投稿を削除することが可能です。
なお、仮処分手続において削除命令を取得する際、「担保金」というお金を法務局に供託(一時的に預ける)する必要があります。
「担保金」とは、違法な保全命令または保全執行によって、債務者に損害が生じた場合に、債務者の損害賠償請求権を担保するための金銭で、最終的には取戻手続が用意されています。
一時的とはいえ、資金を準備する必要がありますので、ご注意ください。
なお、削除仮処分における担保金の相場は30万円となっています(投稿数や投稿の内容によって変わる場合があります)。
ホスラブでの誹謗中傷でお困りの場合、まずはご相談ください
以上、ホスラブで誹謗中傷されてしまった場合の対応についての解説でした。
匿名のインターネット掲示板という意味では、5chや爆サイといった他の掲示板と性質は似ているのですが、ホスラブは運営会社が対外的に公表されていません。
そのため、ホスラブに対する開示請求や削除請求の経験がない場合、適切な措置を取れない可能性があります。
その意味で、ホスラブの誹謗中傷対応については、経験豊富な弁護士に相談することが重要になってきます。
当事務所では、ホスラブの投稿に関する開示請求や削除請求について、多数の対応実績、成功事例があります。
ホスラブでの誹謗中傷でお困りの方は、お気軽にご相談ください。