インターネット問題
2026.05.23
転職サイトに自社の悪評を書かれた場合の影響は?弁護士に依頼するメリットについて解説

転職市場において、転職会議やOpenWorkなどの会社の評判の口コミが掲載されているサイトは、応募の決定に大きな影響を及ぼしていると考えられます。
口コミのある転職サイトは、求人票だけでは見えない生の声を確認できるツールとして、多くの転職活動者に利用されています。
しかし、こうしたプラットフォームは匿名性が高いため、事実に基づかない誹謗中傷や、悪意のある書き込みがなされることも珍しくありません。
今回は転職サイトに悪評を書かれた場合の対処法などについて考えていきたいと思います。
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監修者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純
発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。
私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。
転職活動をしている者が転職サイトを利用する割合
転職活動を検討している人々が、実際の応募など行う前に、口コミサイトを確認する割合は年々増加しています。
各種の調査によれば、転職活動者のうち、およそ7割から8割以上の人が、何らかの形でインターネット上の口コミ情報を参考にしているというデータがあります。
かつてはハローワークや求人誌、紹介会社からの情報が主体でしたが、現在はスマートフォンの普及により、いつでも手軽に企業の評判を検索できる環境が整っています。
求職者は、給与水準や残業時間だけでなく、職場の雰囲気や経営層の人間性、福利厚生の実態など、求人票の文字面だけでは判断できない情報を求めています。
特に、若年層や高い専門性を持つハイキャリア層ほど、情報の真偽を見極めるために複数のサイトを使い分ける傾向が強く、口コミ情報の重みは増しています。
転職サイトに悪評を書かれた場合の影響は?
転職サイトに悪評や過度な誹謗中傷が掲載された場合、企業は次のような影響を受ける可能性があります。
- 優秀な人材を確保しにくくなる
- 採用コストが高くなる可能性がある
- 風評被害を受けて企業イメージが悪くなる
優秀な人材を確保しにくくなる
企業が元社員などから転職サイトに悪評を掲載されることによる影響として、本来獲得できたはずの優秀な人材を逃してしまうことがあります。
能力が高く、選択肢が多い求職者ほど、リスクを避けるために慎重に企業を選別します。
口コミサイトにパワハラやサービス残業などの書き込みがあれば、事実のいかんに関わらず、求職者の応募意欲に悪影響を及ぼす可能性は否定できません。
1度失った採用の機会を回復させるのは容易ではなく、企業の将来を担うはずだった人材が他社に流出することは、長期的な競争力の低下を招きます。
採用コストが高くなる可能性がある
転職サイトに書かれた悪評が広まる影響として、採用活動にかかるコストが増大することが考えられます。
自社のブランド力だけで応募が集まらなくなると、企業は求人募集の掲載期間を延長したり、より高額な求人広告を出稿したりといった手段を講じなければなりません。
また、悪評を打ち消すための広報活動や、内定者に対するフォローアップのための面談を増やすなど、現社員の工数が増加することも予想されます。
結果として1人を採用するのにかかる採用単価が大きくなってしまうこともありえます。
風評被害を受けて企業イメージが悪くなる
転職サイトの悪評は、求職者だけでなく、取引先や顧客の目にも触れる可能性があります。
「法令遵守がなされていない」「従業員を大切にしない」といったレッテルを貼られることは、企業の社会的信用を大きく損ないかねない重大な問題です。
風評被害により企業イメージが悪化することは、自社にとって大きな悪影響といえるでしょう。
転職サイトの悪評が違法となりえるケース
転職サイトへの投稿は、基本的には表現の自由や、労働者の正当な意見表明として認められる側面があります。
しかし、その内容が一定の限度を超えた場合、法的に名誉毀損などの違法行為と判断される可能性があります。
名誉毀損とは、人または法人の品性、徳行、名声、信用などの人格的価値について、社会から受ける客観的な社会的評価を低下させる行為をいいます。
具体的には、事実または意見を摘示して社会的評価を下げる場合がこれに該当します。
「残業地獄」「パワハラ当たり前」「職員が精神的に追い詰められて8人も退職した」など、具体的な事実を摘示し、一般の閲覧者が職場環境の悪さや違法行為を読み取れる場合は、社会的評価を低下させ、名誉毀損が成立し得ます。
また、「ブラック企業」というような表現でも、単なる抽象的な罵倒ではなく、具体的な事実の摘示が伴っていたり、根拠を欠いた意見として、労働法違反や過酷な労働環境を示唆する場合には、名誉毀損が成立することがあります。
書き込みによって、その企業の社会的評価が不当に下げられたかどうかが、違法性を判断する上での中心的な基準となります。
転職サイトの悪評が違法とならないケース
企業の社会的評価を下げるような内容であっても、必ずしもすべてが違法となるわけではありません。
悪評であっても、文脈や具体的な理由付けが全くなく、あまりに抽象的すぎる場合は、個人の主観・感想に過ぎないとして、社会的評価を低下させないと判断され違法行為にならないこともあります。
また、違法性阻却事由と呼ばれる要件を満たす場合、その書き込みは違法ではないと判断されます。
違法性阻却事由とは、一見違法行為にみえることであっても、特別な事情があって違法行為とされない理由のことです。
具体的には、以下の3つの要件をすべて満たしていることが必要です。
- 公共の利害に関する事実であること
企業の労働環境やコンプライアンスに関する情報は、これから入社を検討する人々にとって重要な判断材料となるため、多くの場合で公共性が認められます。 - 専ら公益を図る目的であること
相手を貶める個人的な恨みではなく、情報の提供によって他の求職者が不利益を被らないようにするという目的であれば、この要件を満たします。 - 摘示された事実が真実である、または摘示された意見が前提とする事実が真実であること
「サービス残業がある」という投稿に対し、実際にそのような事実が客観的な証拠によって裏付けられる場合、その投稿は違法とはなりません。
意見や論評の場合も、前提となる事実が重要な部分で真実であれば、その評価が不当に人身攻撃にわたるなど論評の域を逸脱しない限り、違法性が阻却されることがあります。
転職サイトの口コミが名誉棄損になった事例を紹介
今回紹介する事例は、システム設計会社に約2ヶ月間在籍した元従業員が、転職口コミサイト「転職会議」に投稿した内容について、会社側が名誉権侵害を主張し損害賠償を求めたものです(東京地方裁判所 事件番号令和2年(ワ)第6978号)。
投稿内容は、代表者からの執拗な夜間・深夜の電話連絡、飲み会への強制参加、教育体制が整っておらずスキルアップが望めない、といった主旨の計3件の記事でした。
裁判所は、夜間電話や飲み会強制の記述について、会社が従業員に過度な干渉や心理的強制を行っているという印象を与え、社会的評価を低下させるものと認められました。
また、客観的な証拠がなく、会社側がこれを否定する陳述を行っていることから、真実とは認められないと判断しました。
なお、事業部の成長性に関する記述などは、個人の主観的な感想や論評の域を出ないとして名誉毀損には当たらないとされました。
この判決は、具体的な事実を伴う批判がいかに慎重になされるべきかを示す重要な判断と言えます。
企業が転職サイトに悪評を書かれた場合弁護士へ依頼するメリット
企業が転職サイトに悪評を書かれた場合、早期に弁護士へ依頼すべきといえます。
具体的に弁護士へ依頼するメリットは以下です。
悪評が誹謗中傷などの違法行為にあたるか判断できる
弁護士に依頼するメリットとして、投稿内容を客観的な法執行の基準に照らし合わせて、削除や訴訟が可能かどうかを判断してもらえる点があります。
企業内の人間が「ひどい」と感じる内容であっても、それが法的に名誉毀損や業務妨害に該当するかどうかは、裁判例や最新の法解釈などに基づいた分析が必要です。
弁護士は、その書き込みが事実の摘示なのか、あるいは意見論評の範囲内なのかを見極め、勝訴の見込みや削除の可能性を診断してくれます。
また、弁護士のアドバイスを得ることで、会社としての公式な反論を行うべきか、あるいは沈黙を守るべきかといった広報上の戦略についても示唆を得られます。
投稿の削除に関する交渉や法的手続を行える
弁護士に転職サイトの悪評の削除を依頼するメリットとして、投稿の削除に関する交渉や法的手続を代理できる点があります。
実際に投稿を削除するためには、サイト運営者やプロバイダなどに対して手続を行う必要があります。
しかし、サイト運営会社に悪評の口コミの削除を要請したとしても、弁護士を通じた請求でなければ、表現の自由を盾にして任意での削除に応じないこともあります。
弁護士は、サイト運営会社へ削除要請を行ったり、情報流通プラットフォーム対処法(旧:プロバイダ責任制限法)に基づいた送信防止措置要求などの通知を行い、運営側に任意で投稿を削除できるよう交渉することが可能です。
また、任意の交渉で削除されない場合、削除仮処分という裁判手続を代理して行えます。
この手続は、迅速性が求められ、高度な法的書面の作成が必要となるため、個人や法人の一般職員が対応するのは困難を極めます。
弁護士に一任することで、削除までの過程をスムーズに進められ、情報の二次拡散を防ぐことにもつながります。
投稿によって受けた被害回復するための手段を講じられる
弁護士は、投稿を削除する手続だけでなく、投稿者の特定や、被った損害の賠償を求めるためのサポートを行うことができます。
悪質な投稿をしている人物を特定するためには、裁判所を通じた発信者情報開示請求という複雑な手続を行う必要があります。
投稿者を特定できると、違法行為によって受けた被害額を請求したり、謝罪を求めたり、再発防止のための措置を講ずることができます。
相手が、名誉棄損行為などの違法行為を認めない場合には、訴訟にて損害賠償などを求めることになりますが、弁護士であればその対応を行うことができます。
これは、大きなメリットといえます。
まとめ
今回は、転職サイトに企業の悪評を書かれた場合に被る悪影響や弁護士に依頼するメリットについて解説しました。
転職サイトの口コミ情報は、企業が行う採用活動や社会的信用などに大きく関わる可能性があります。
しかし、悪評の削除をはじめ投稿者へ責任を追求するには、複雑な法的手続や交渉を行わなければなりません。
自力で対応することは難しいため、インターネット投稿の削除に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。













