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エンターテイメントに関する法務や、インターネットトラブルについて、実務を交えて随時コラムを更新しております。
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インターネット問題

2026.06.28

事実と異なる情報がネットに書かれた!企業はどのように対応すべきなのか解説

インターネット社会において、情報は一瞬にして世界中に広がる力を持ちます。
拡散された情報は、それが正確であるかどうかは二の次になる傾向にあるため、状況によっては企業の社会的信用の著しい低下につながりかねません。
今回は、企業が事実と異なる情報をネットに書かれた場合の対応や、具体的な事例について紹介していきたいと思います。

CONTENTS

監修者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純

発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。

私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。

企業批判か風評被害であるかの線引きは?

企業に対する否定的な意見すべてが、法的に処罰や削除の対象となるわけではありません。
企業活動に対する監視や批判は表現の自由として広く認められており、健全な競争を促進する側面も持っています。
企業批判と風評被害の線引きについてそれぞれ確認していきましょう。

企業批判で違法性が低いケース

企業への批判が法的手段の対象とならない許容される表現とされるのは、一定の節度を守ったものです。
たとえば、実際に提供されたサービスの質が低かったことに対し、「待ち時間が長くて不満だった」「スタッフの対応を改善してほしい」といった具体的な体験に基づいた主観的な感想を述べる行為は、原則として違法とはみなされません。
したがって、この場合企業は投稿した顧客に対し、損害賠償請求などの法的責任を負わせることはできません。

違法性が高く風評被害にあたるケース

企業批判ではなく違法性の高い風評被害とされるケースは、SNSなどネットで書かれた内容が表現の自由として許容される範囲を超えたときであり、典型的なケースとして次のようなものが考えられます。

事実無根の虚偽情報を書き込む行為

企業側が対応すべき違法性の高いものとして、虚偽の情報をネット上に書かれた場合があります。
「この企業は反社会的勢力と繋がりがある」「この食品には有毒な添加物が含まれている」といった、客観的事実に反する書き込みは、拡散されると偽情報であったとしても社会的信用が下がります。
拡散される前に対応することが求められます。

従業員への人格攻撃や侮辱的な表現が過度に含まれる投稿

企業が早期に対応すべき風評被害として、従業員や役員など特定の者への人格攻撃侮辱的な表現が含まれるネットの書き込みです。
「バカ」「死ね」「詐欺師の集団」といった罵詈雑言は、表現の自由の範囲を逸脱していると判断されます。
また、企業には従業員を守る安全配慮義務もあるため、早期に対応しないと対加害者への対応だけでなく、企業内トラブルに発展する可能性があります。

業務を妨害する意図が明白である投稿

企業が対応すべきネットの書き込みとして、虚偽のクレームを大量に投稿、偽の情報を流して契約を破棄させようとしたりするなどが考えられます。
このような投稿は、民事上の対応だけではなく、場合によっては威力業務妨害偽計業務妨害といった刑事事件に繋がりかねないものです。

社会的評価が下がっても違法にならないケースもある

企業の社会的評価を低下させるようなネットの書き込みであっても、特定の条件を満たす場合には、例外的に違法性がないと判断されることがあります。
これを違法性阻却事由と呼びます。
以下の要件をすべて満たしていると認められれば、法的責任を問うことはできません。

公共の利害に関する事実であること(公共性)

書き込みの内容が、広く社会に知らせるべき価値がある事柄であるかどうかです。
企業の不祥事や製品の安全性に関する情報は、消費者の利益に直結するため、公共性が認められやすいです。

専ら公益を図る目的であること(公益性)

相手を陥れる個人的な恨みではなく、社会全体の利益のために発信されたものである必要があります。

摘示された事実が真実であること、または真実と信じるに足りる相当な理由があること(真実性・相当性)

記載された内容が重要な部分において真実であれば、たとえ企業に不利益な内容でも違法とはなりません。
また、仮に真実でなかったとしても、発信者が徹底した調査を行い、真実だと信じたことに正当な理由があれば免責されることがあります。

意見論評の場合は人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱していないこと

事実の提示ではなく個人の意見を述べる場合、卑劣な表現や私生活への攻撃が伴っていなければ、保護の対象となります。

企業が風評被害を受けた場合に行う手順

自社に対する不適切な書き込みを発見した際、早期に対応をしないと風評被害によるリスクが高くなります。
したがって、以下のような手順を踏む必要があります。

風評被害であるかどうかの事実確認を行う

自社にとって不利益な書き込みを発見した場合、まず対応すべきことは、その内容が風評被害であるかどうかを分析することが挙げられます。
投稿された内容が真実なのか、虚偽であるのか社内確認を含め、調査します。
現場の従業員への聞き取りや、過去の取引記録の照合を丁寧に進め、事実関係を確定させることが大切です。

発信者に対して削除要請や警告など通知を行う

調査の結果、風評被害であり放置できないと判断した場合は、発信者に対してアクションを起こします。
侵害者が特定できている場合は、弁護士を介して内容証明郵便を送付することが効果的です。
書面の中で、どの発言がどのような法的な権利を侵害しているのかを指摘し、情報の撤回や訂正などを求めてください。

また、SNSや匿名掲示板などの場合は、サイト運営者やプロバイダが設置している通報フォームを利用して削除を依頼します。
この際、利用規約に照らして不適切であることを具体的に説明する作業が必要となります。

正しい情報をSNSやホームページで発信する

情報の空白を作らないために、自社からの公式な見解を公表する過程も重要です。
自社ホームページやプレスリリース、公式SNSアカウントを通じて、事実に基づいた正しい情報を発信します。
虚偽の情報を否定するだけでなく、何が正解なのかを明確に示すことで、閲覧者が情報の真偽を判断するための材料を提供します。

公表のタイミングは十分な調査結果に基づいたものである必要はありますが、時間が経つと虚偽の情報が世間にとって正しいという誤認識を生みかねないため、早期に発信することが求められます。
自社としてのメッセージを送信する際、曖昧な表現や、後から矛盾が生じるような説明は、炎上の火種となりえるため、内容は弁護士に相談し、発表した方が良いでしょう。

削除請求などの裁判手続を検討する

任意の削除依頼に応じない場合、あるいは投稿者が不明な場合には、裁判所の手続を利用することになります。
主要な2つの手段が考えられます。

削除請求

権利侵害情報を掲載し続けているサイト管理者やプロバイダに対し、情報の削除を求めます。
通常の裁判では半年から1年以上の時間を要するため、実務上は仮処分という簡易的な手続きを利用することが一般的です。
仮処分であれば、数ヶ月程度で完結します。
裁判所が権利侵害を認めれば、該当の書き込みを削除することができます。

発信者情報開示請求

投稿者が匿名で特定できない場合、情報流通プラットフォーム対処法に基づき、投稿者の特定に必要な情報の開示を求めます。
2022年の法改正により、非訟手続が新設され、以前よりも迅速な特定が可能になりました。
特定ができれば、その人物に対して直接、損害賠償などの交渉を行うことができるようになります。

裁判手続に進むかどうか、また損害賠償の交渉などは、事案の緊急性や自社の非の有無、そして得られるメリットを総合的に判断して進める必要があります。
この判断は個別の状況によって大きく方針などが異なるため、早い段階でネットトラブルに精通した弁護士に相談、依頼した方が良いでしょう。

企業への風評被害が認められた事例を紹介

実際の裁判実務において、どのような発言が名誉毀損として認められ、どのような賠償が命じられたのかを理解することは、自社の対応基準を作る上で非常に参考になります。
代表的な3つの事例を紹介します。

インターネット動画での発言に対し名誉毀損を認めた事例

管轄裁判所: 東京地方裁判所
判決年月日: 平成23年4月22日

事案の概要

インターネット動画サイトを運営する代表取締役Aが、自社の動画内において、日本放送協会の職員が過去に不祥事を起こした際、協会が組織を挙げてそれをもみ消した、といった内容の発言を繰り返しました。
さらに、協会の運営体制そのものが腐敗しているといった批判を展開しました。
これに対し、協会は本件発言が協会の社会的評価を著しく低下させる名誉毀損にあたるとして、損害賠償および謝罪広告、動画の削除を請求しました。

判決内容

東京地方裁判所は、代表取締役Aの発言は具体的な事実の摘示を伴うものであり、一般の視聴者に対し日本放送協会が組織的に隠蔽工作まで行うような不誠実な組織であり、放送自体の公正性や信頼性を欠いているという強烈な印象を与えるものと認定しました。
結果として、法人の人格権としての名誉権侵害を認め、日本放送協会の請求を全面的に認容しました。
被告側に対し、慰謝料として100万円の支払いと、動画内の該当部分の削除を命じ、法的な制裁を加えました。

ウェブサイト上の批判記事に対し名誉毀損を認めた事例

管轄裁判所: 最高裁判所第二小法廷(最終判断)
判決年月日: 平成24年3月23日

事案の概要

フリージャーナリストYが自身の個人ウェブサイトにおいて、日刊新聞を発行するX1株式企業とその従業員に関する記事を掲載しました。
内容は、X1社の従業員が新聞販売店を戸別訪問した際、本来配付すべきでない他社のチラシなどを無断で持ち去っており、その行為は法的に窃盗罪に該当するといった、犯罪行為を断定するような激しい告発記事でした。
これに対し、X1社および該当する従業員らは、事実と異なる記載によって名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストYを提訴しました。

最終的な判決内容

第一審では名誉毀損が認められましたが、控訴審では記事は特定の社会的評価を低下させるまでの内容ではないとして、一転してX1社側の請求を棄却する判決が出されました。
これを不服としたX1社側が上告し、最高裁判所が最終的な判断を下しました。
最高裁は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、犯罪者として扱っている記事が法人の社会的評価を低下させることは明らかであるとして、高裁の判断を誤りとしました。
窃盗という言葉の法的なインパクトを重視し、安易なジャーナリズム活動の暴走を抑制する姿勢を示しました。
最高裁は控訴審判決を破棄し、具体的な損害額の算定をやり直させるため、事件を東京高等裁判所に差し戻しました。

ネット上で風評被害を受けたときは弁護士へ依頼すべき

ネット上の書き込みは、情報元がその発信者本人が作ったものであったり、雑誌やWEB記事の一部を引用し、あたかも不正や犯罪をその企業が行ったかのように誤認させたりといった悪質なものも少なくありません。
また、炎上し拡散された場合、偽情報を発信した者だけではなく、その情報を信じ、企業を貶めるような引用ポストなどを行った者も対象となりえます。

このような手続を企業内で完結させるには、大きな人的コストがかかるとともに、法的な判断を行わなければなりません。
情報収集や対消費者などへの対応、誹謗中傷などの風評被害を行った者たちへの対処などを独力で行うことは困難といえます。
そのため、風評被害まがいのネットの書き込みや、炎上リスクを下げるための対外的な対応などはネット問題に精通している弁護士に相談すべきといえます。

まとめ

今回は、事実と異なる情報がネット上に書かれた際の企業としての対応、判断基準、具体例などについて解説しました。
企業にとって、一度失われた信頼を回復させる工程には、多大な時間と労力が必要となります。
不当な風評被害に直面した際は、初動がとても重要となるため、現在お困りの方や炎上に対するリスクヘッジなどを検討している方は当事務所にご相談ください。

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