エンタメ・知財法務
2026.08.17
フリーランス新法と業務委託契約の見直しポイント〜ゲーム・アニメその他エンタメ事業者が押さえるべきフリーランスとの契約実務〜

ゲーム、アニメ、映像、音楽、出版といったエンタメ業界は、外部のクリエイターへの発注によって成り立っています。
イラストレーター、3Dモデラー、シナリオライター、作曲家、声優、動画編集者、翻訳者など、様々なクリエイターが関与する業界において、社内の人員だけでコンテンツの制作を完結させることは難しいでしょう。
この外部発注について、2024年11月1日、いわゆるフリーランス新法が施行されました。
弊所にも、施行後、「雛形の契約書をフリーランス新法に沿って修正してほしい」、「現状の制作フローを見直したい」といったご相談が寄せられるようになりました。
他方で、「うちは資本金が小さいので取適法(旧下請法)の対象外だから関係ない」とお考えの事業者様も、いまだ少なくありません。
しかしながら、フリーランス新法には取適法(旧下請法)のような資本金要件がなく、従業員を使用している事業者であれば、適用の対象となります。
本稿では、エンタメ企業が外部クリエイターに発注する場面を念頭に、フリーランス新法が求める実務対応と、契約書・発注書の見直しポイントについて解説いたします。
CONTENTS
執筆者プロフィール

弁護士法人LEON
代表弁護士 田中 圭祐
大手エンタメコンテンツ会社の法務部に所属していた経験から、
企業法務、知的財産法務、渉外法務の分野を中心に活動しております。
事務所としては、これらの分野に加え、インターネット問題の解決に積極的に取り組んでおります。
フリーランス新法とは
法律の概要
フリーランス新法の正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。2024年11月1日に施行されました。
この法律は、大きく二つの部分から構成されています。
一つは「取引の適正化」に関する規律で、公正取引委員会および中小企業庁が所管しています。
もう一つは「就業環境の整備」に関する規律で、厚生労働省が所管しています。
前者は、取引条件の明示や報酬の支払期日など、いわば取適法(旧下請法)に近い内容です。
後者は、募集情報の的確表示、育児介護等への配慮、ハラスメント対策といった、労働法に近い内容です。
フリーランス新法は、特定受託事業者(フリーランス)に対して、業務を発注する際に、発注者に対して、種々の規制を設けるものです。
取適法(旧下請法)との違い
従来、事業者間の発注については取適法(旧下請法)が規律してきましたが、取適法(旧下請法)は資本金を基準に適用対象を画していました。
そのため、発注者が資本金の小さい制作会社や事務所の場合、実質的に規制の外に置かれていました。
これに対し、フリーランス新法には資本金要件がありません。
従業員を使用する個人事業主、または二人以上の役員がいるか従業員を使用する法人であれば、それだけで「特定業務委託事業者」として義務を負うため、ほとんどの中小企業が規制の対象となります。
規制の全体像
本法が発注者に課している義務は、次の7つです。
| 義務の内容 | 対象となる発注者 | 期間の要件 |
|---|---|---|
| ①取引条件の明示(法3条) | 業務委託事業者 | なし |
| ②報酬の支払期日の設定と支払(法4条) | 特定業務委託事業者 | なし |
| ③7つの禁止行為(法5条) | 特定業務委託事業者 | 1か月以上の業務委託 |
| ④募集情報の的確表示(法12条) | 特定業務委託事業者 | なし |
| ⑤育児介護等への配慮(法13条) | 特定業務委託事業者 | 6か月以上は義務、6か月未満は努力義務 |
| ⑥ハラスメント対策の体制整備(法14条) | 特定業務委託事業者 | なし |
| ⑦中途解除・不更新の事前予告(法16条) | 特定業務委託事業者 | 6か月以上の業務委託 |
②から⑦までは「特定業務委託事業者」、すなわち従業員を使用する個人、または二人以上の役員がいるか従業員を使用する法人が対象です。
これに対し、①の取引条件の明示だけは、より広く「業務委託事業者」、すなわちフリーランスに業務委託をする事業者一般が対象とされているので注意が必要です。
これは、義務の名宛人が条文ごとに異なることによるものです。
取引条件の明示義務を定める法3条1項は、その名宛人を「業務委託事業者」としており、「業務委託事業者」は次のとおり定義されています。
(同法第2条第5項)
この法律において「業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。
そして、法3条1項は次のとおり定めています。
(同法第3条第1項)
業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(中略)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
したがって、従業員を使用していない一人法人や個人事業主が、他のフリーランスに発注する場合であっても、3条通知の義務は生じます。
他方、報酬の支払期日(法4条)や禁止行為(法5条)は「特定業務委託事業者」に課される義務ですので、この場合には適用されません。
特定受託事業者(フリーランス)とは
法律上、保護の対象となる「特定受託事業者」とは、①従業員を使用しない個人、または②代表者以外に役員がなく、かつ従業員を使用しない法人(一人会社)をいいます。
ここでいう「従業員」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を指します。
したがって、繁忙期に短期のアルバイトを使う程度であれば、なお「特定受託事業者」に当たる余地があります。
実務上、判断に迷いやすいのは次のような場面です。
アシスタントを雇っているイラストレーターは、そのアシスタントが上記の基準に当たらない従業員であれば対象外となります。
他方、節税等の目的で法人化しているクリエイターであっても、代表者一人だけの法人であれば対象となります。
どちらに当たるかは外形からは判別できませんので、発注前に確認するか、個人事業主や小規模会社は、一律に「フリーランスに該当する」という前提で雛形を用意するのが安全です。
特定業務委託事業者(発注者)とは
法律上の義務を負う「特定業務委託事業者」とは、①従業員を使用する個人、または②二人以上の役員がいるか、もしくは従業員を使用する法人をいいます(法第2条第6項)。
なお、前述の通り、特定業務委託事業者以外の発注者(業務委託事業者)も、取引条件の明示義務は課されているので注意が必要です。
取引条件の明示
明示すべき事項
フリーランスに業務を委託した場合、発注者は、直ちに、次の事項を明示しなければなりません(法3条)。実務上、「3条通知」と呼ばれます。
- ① 業務委託事業者およびフリーランスの名称
- ② 業務委託をした日
- ③ 給付の内容
- ④ 給付を受領する期日(役務提供の場合は提供を受ける期日)
- ⑤ 給付を受領する場所
- ⑥ 検査を行う場合はその完了期日
- ⑦ 報酬の額および支払期日
- ⑧ 金銭以外の方法で支払う場合はその内容
このうち、エンタメ実務で問題となりやすいのが③の「給付の内容」です。
「イラスト1点」や、「キャラクターデザイン1点」、「ゲーム一式」などといった抽象的な記載の場合、具体的な仕様、納品形式、修正回数、使用範囲が定まらなければ、後に紛争となる場合があります。
特にエンタメ業界は、この種の紛争が多く、当職も何度も契約書上の記載が十分でないことに起因する紛争を対応したことがあります。
3条通知は法律上の義務であると同時に、これを遵守すると、紛争を防止する効果も期待できるため、できる限り具体的に通知事項を整理して記載することが推奨されます。
明示の方法と時期
明示は、書面または電磁的方法によって行う必要があります。
紙の発注書に限られず、電子メール、発注管理システム、さらにはチャットツールでも構いません。
重要なのは、業務委託をしたら「直ちに」明示する必要があるという点です。
制作が始まってから、あるいは納品後にまとめて発注書を出すという運用は、法律上は不適切です。
なお、継続的な発注の場合、SlackやChatwork等で受発注のやり取りをしているケースも多いかと思いますが、紛争が始まってから、一方当事者がデータを削除してしまったり、アクセス権限を取り上げてしまうなどによって、詳細な状況が不明確になる事案に何度か触れたことがあるため、発注内容だけはメールでやり取りをしたり、適宜スクリーンショットで保存しておくなどのフォローをしておくと安全です。
よくある問題点
エンタメ業界では、次のようなパターンが目立ちます。
- 発注書を出していない
長年の付き合いのあるクリエイターについて、口頭とチャットだけで進行しているケースや、ほとんど何も書いていない簡易な書面を結んで進行しているケースは珍しくありません。 - 途中で仕様、スケジュール、業務委託料が変更されているが、変更覚書が締結されていない
何度も変更を重ねた結果、最終的な契約の内容が不明確な状況となっているケースが散見されます。 - 仕様が後決めになっている
とりあえず着手してもらい、進行しながら方向性を固めていく進め方は、クリエイティブの現場ではある程度やむを得ない部分もありますが、3条通知との関係では問題を残します。
なお、仕様が後決めとなること自体が、直ちに違法となるわけではありません。この点は、前記の法3条1項ただし書が手当てをしています。
すなわち、明示事項のうち、その内容が定められないことにつき「正当な理由」があるものについては、当初の明示を要しないものとされ、その内容が定められた後、直ちに明示すれば足りるとされています。
ただし、規則により、当初の明示の際に、①その内容が定められない理由と、②内容を定めることとなる予定期日を明示する必要があります。単に未記載のまま放置してよいということではありません。
また、「正当な理由」とは、業務委託をした時点において内容を定めることが客観的に困難な事情をいいます。決めるのが面倒である、追って協議すればよいと考えていた、といった事情はこれに当たりません。
したがって、実務としては、①未定である理由と予定期日を当初の明示に含めること、②内容が定まり次第、直ちに追加の明示を行うこと、この二つをセットで運用する必要があります。 - クリエイター案件特有の事項が書面化されていない
修正(リテイク)回数、著作権の帰属、著作者人格権の不行使、二次利用の範囲、クレジット表記といった事項が、そもそも書面化されていないというパターンです。
これらは3条通知の明示事項そのものではありませんが、後日の紛争の火種となる中核部分ですから、あわせて書面化しておくのが安全です。
基本契約書と個別発注書
継続的に発注する相手方については、権利関係や秘密保持といった共通条件を定めた基本契約書を締結したうえで、個別の案件ごとに発注書を発行する、という二段構えをお勧めしています。
この場合、3条通知に必要な事項を発注書のテンプレートに組み込んでおけば、現場の担当者が意識せずとも法律上の要求を満たすことができます。
法が求める取引条件の明示は、担当者の努力ではなく、書式と仕組みで担保するのが適切です。
報酬の支払期日
60日ルール
発注者は、給付を受領した日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内において、支払期日を定めなければなりません(法4条1項)。
注意が必要なのは、支払期日を具体的な日付として特定する必要があるという点です。「検収後、当社の定める時期に支払う」といった定め方は、これを満たしません。
再委託の場合の例外
もっとも、元委託者から受けた業務をフリーランスに再委託する場合には、例外が認められています。
すなわち、①再委託である旨、②元委託者の名称、③元委託業務の対価の支払期日をあらかじめ明示していれば、支払期日を「元委託支払期日から起算して30日以内」とすることができます(法4条3項)。
(同法第4条第3項)
前二項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
ここでいう「元委託支払期日」とは、元委託者が支払うものとして定められた期日をいい、実際に元委託者から入金があった日ではありません。
したがって、元委託者からの入金が遅れたとしても、フリーランスへの支払期日を後ろ倒しにすることはできませんので注意してください。
なお、この例外を用いた場合、フリーランスからの給付を受領した日から支払までの日数は、結果として60日を超えることになります。
元委託者の支払サイトが、元委託者の給付受領日から60日以内に設定されているような場合には、フリーランスへの支払は、給付の受領から90日程度となることもあり得ます。
再委託を行う場合は、元請からの入金前に外注先へ支払わなければならない、という資金繰り上の問題を回避するために、上記①乃至③の明示を忘れずに行いましょう。
契約書の条項例
上記を踏まえて、基本契約書の条文としては、次のような定め方が考えられます。
第○条(業務委託料の支払)
- 甲は、乙に対し、成果物が検査に合格した日の属する月の翌月末日までに、業務委託料を支払う。
- 前項にかかわらず、本契約に基づく業務委託について特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律又は中小受託取引適正化法の適用がある場合、甲は、乙に対し、甲が乙の給付を受領した日から起算して60日以内に、業務委託料を支払う。
- 前項にかかわらず、甲が元委託者から受託した業務の再委託を行う場合であって、かつ、甲が乙に対し、再委託である旨、元委託者の氏名又は名称及び元委託業務の対価の支払期日を明示した場合には、支払期日は、元委託支払期日から起算して30日以内とする。
取引先のすべてが特定受託事業者に当たるわけではありませんので、汎用的な雛形の基本契約書には、上記のような記載をすると良いでしょう。
60日か、2か月か
ところで、「毎月末日締め(中間成果物や報告書を納品させる)、翌々月末日払い」といった契約の場合、月によっては31日あるため、支払は給付を受領した日から61日目または62日目となります。
この場合、法律上問題が生じるのかという疑問が生じそうですが、公正取引委員会のQ&Aによれば、60日ルールは2か月以内として運用することが可能とされており、結論として問題がないという整理になります。
Q48 特定業務委託事業者は、特定受託事業者との間の業務委託において、例えば毎月末日納品締切、翌月末日支払のように、月単位の締切制度を採用し、毎月の特定日に報酬を支払うこととしています。このような場合、月によっては1か月が31日の月もあるため、特定受託事業者から給付を受領した日から60日を超えて報酬を支払うことがありますが、本法上問題となりますか。
A 月単位の締切制度では、月によっては31日の月があるため、前月の納品締切日の翌日に給付を受領した場合には、報酬の支払が給付を受領した日から61日目又は62日目の支払となる場合があります。このような場合、本法の運用に当たっては、給付を受領した日から60日以内との規定を、給付を受領した日から2か月以内として運用するため、本法上問題としません。
(公正取引委員会Q&A)
禁止される7つの行為
対象となる取引
1か月以上の期間で行う業務委託については、上記に加えて、次の7つの行為が禁止されます(法5条)。
禁止行為の内容
- ①受領拒否
- ②報酬の減額
- ③返品
- ④買いたたき
- ⑤購入・利用強制
- ⑥不当な経済上の利益の提供要請
- ⑦不当な給付内容の変更・やり直し
エンタメ実務での注意点
エンタメ業界においては、成果物の変更や、リテイクが頻繁に発生する業界です。
そのため、「⑦不当な給付内容の変更・やり直し」に注意が必要です。
クオリティが足りていないことを理由にやり直しをさせる場合に備えて、予め適切な仕様書等を用意しておくことが重要となります。
また、成果物が一定の水準に達していないとして「②報酬の減額」を提示する企業も存在しますが、これを正当化するには相当な証拠や客観的な状況が必要となるため、報酬の減額はかなりリスクのある対応となります。
「①受領拒否」も上記と同様リスクの高い対応となります。
この種の問題は、やはり契約書や発注書で、成果物が明確になっていないことから生じる発注者と受注者の認識の相違に起因するため、事前に双方納得のいく成果物を明確にした上で、発注者の側でも中間成果物や進捗状況を適宜確認することが極めて重要です。
就業環境の整備
募集情報の的確表示
求人媒体やSNSでクリエイターを募集する際、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、内容を正確かつ最新のものに保つ必要があります(法12条)。
募集を出したまま放置している古い情報についても、フリーランスが条件等を誤解する原因となるため、適宜のタイミングで削除するなど情報を正確かつ最新のものに保つよう注意しましょう。
育児介護等への配慮
6か月以上の期間で行う業務委託については、フリーランスから育児・介護等との両立についての申出があった場合、必要な配慮をする義務があります(法13条)。6か月未満の場合は努力義務となります。
配慮の内容は一律ではありませんが、申出の内容を把握し、取りうる選択肢を検討し、実施するか、実施しない場合はその理由を説明する、という手順を踏むことが求められます。申出をしたことを理由に契約を打ち切るといった不利益な取扱いは禁止されます。
ハラスメント対策
発注者は、ハラスメントに関する方針を明確化して周知するとともに、相談窓口を設置し、事案が生じた場合の事後対応を行う体制を整備しなければなりません(法14条)。
エンタメ業界では、収録現場、撮影現場、制作進行の過程で、社外のクリエイターが当事者となる場面が想定されます。
社内の従業員向けの相談窓口はあっても、外部クリエイターが使える窓口が用意されていない、という事業者様は少なくありません。この機会にご確認いただくことをお勧めします。
中途解除・不更新の予告
6か月以上の期間で行う業務委託を中途解除し、または更新しない場合には、原則として、解除日または契約満了日の30日前までに予告しなければなりません(法16条)。
予告後、フリーランスから理由の開示を求められた場合には、遅滞なく開示する必要があります。
レギュラー案件や長期プロジェクトの体制変更に際して問題となりやすい規定です。
作品の途中で担当者を交代させる、といった判断を行う場合には、時間的な余裕をもった検討が必要になります。
違反した場合のリスク
行政の対応
フリーランスは、本法違反の事実について、行政庁に申し出ることができます。
また、これとは別に、法令の考え方についての相談窓口も設けられています。
申出を受けた行政庁は、報告徴収・立入検査を行い、指導・助言、勧告、命令および公表という段階を追った措置をとることができます。
命令に違反した場合には50万円以下の罰金が科されます。
また、申出をしたことを理由として不利益な取扱いを行うことも禁止されています。
なお、フリーランス側は、厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運用している「フリーランス・トラブル110番」という窓口が存在しており、クリエイター側からの専門家への相談のハードルは、以前と比べて格段に下がっています。
公表とレピュテーションリスク
罰金の額自体は大きくありませんが、発注者側としては、社名が公表されることによるレピュテーションリスクも軽視できません。
フリーランス新法違反による公表は、金銭的な制裁の問題にとどまらず、取引機会そのものを失うリスクや、企業の社会的な評判の低下につながります。
そして、この点は、既に現実の問題となっています。
公正取引委員会は、2025年3月、本法施行後初めての指導として、ゲームソフトウェア業やアニメーション制作業などの45事業者に対して指導を行ったことを公表しました。
取引条件の明示が行われていなかったことなどが理由とされています。
同年12月には、放送業や広告業などの128事業者に対する指導も公表されています。
さらに、事業者名を公表した勧告も、2025年6月以降、繰り返し行われており、その中には、放送、出版、映像・コンテンツ制作といった業種の事業者も含まれています。
エンタメ業界特有の問題が、こうした当局の動きを通じて、顕在化してきたと言えるでしょう。
チェックポイント
契約書・発注書
最低限、雛形類について、以下の項目をチェックする必要があります。
- ①3条通知の8項目が契約書や発注書のテンプレートに漏れなく組み込まれているか
- ②支払期日が具体的な日付で特定されているか。60日を超えていないか
- ③再委託案件について、元委託者名等の明示を行い、30日ルールを利用できる状態にしているか
- ④6か月以上の契約について、解除・不更新の予告に関する条項が置かれているか
社内フロー
契約書を整えても、現場で発注書が発行されなければ意味がありません。
誰が、いつ、どの書式で発注書を出すのかを定め、発注書の発行を経なければ制作に着手できない運用としておくことが、最も確実な対応です。
あわせて、外部クリエイターが利用できるハラスメント相談窓口の設置と、その周知についてもご検討すると良いでしょう。
まとめ
本稿では、フリーランス新法について、エンタメ企業が外部クリエイターに発注する場面を念頭に解説いたしました。
フリーランス新法は、取適法と異なり資本金要件がないため、これまで規制の外にあった中小の制作会社や事務所も対象となります。
もっとも、求められている内容の多くは、発注内容を書面で明確にし、決めた期日どおりに支払い、一方的な変更を行わない、という当たり前のことです。
これを機に、契約書と発注フローを整理することは、法対応にとどまらず、紛争の予防と、クリエイターとの信頼関係の構築にも直結します。
弊所では、ゲーム会社、アニメ・映像制作会社、芸能事務所、配信事業者など、エンタメ分野の企業様から数多くのご依頼をいただいており、業務委託契約書や発注書の作成・レビュー、社内フローの整備について助言を行っております。
また、クリエイターとの間で実際にトラブルが生じてしまった場合の対応実績も豊富です。
契約書の作成・見直し、社内体制の整備、トラブル対応のいずれについても、どうぞお気軽にご相談ください。












