インターネット問題
2026.09.02
ナイトワークに携わる方が直面しやすいネット上のトラブル

現代のナイトワークにおいて、SNSや掲示板は欠かせない集客ツールです。
しかし、匿名性の陰で誹謗中傷や個人情報の晒しといった被害に遭うリスクも隣り合わせです。
「これって我慢するしかないの?」と不安や不満を覚える方も少なくないと思います。
今回は、ナイトワークに携わる方が直面しやすいネットトラブルについて解説します。
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監修者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純
発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。
私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。
ナイトワークのトラブル①枕営業や前科などの誹謗中傷を受ける
SNSや掲示板で、ご自身の評判を落とすような書き込みをされた場合、名誉毀損にあたる可能性があります。
名誉毀損が成立するためには、公然と、具体的な事実を摘示して、人の社会的評価を低下させたことが必要です。
公然と事実を摘示する
XやInstagramなどで全体に公開されているアカウントから誹謗中傷をされた場合、誰でも見られる状態であるため、「公然と」という名誉毀損の要件の1つに当てはまります。
なお、鍵アカウントやグループ内の投稿であっても、不特定多数に広まる可能性がある場合には、公然性が認められることがあります。
ここでいう事実とは、真実であるという意味ではありません。
真実かどうかにかかわらず、証拠によって真偽を判断できる具体的な事柄を示すことを指します。
社会的評価を下げるような発言
名誉毀損で重要なのは、ご自身のプライドが傷ついたかどうかではありません。
客観的にみて、周囲からの信頼や評判を低下させるおそれのある内容かどうかが重要です。
たとえば、次のような発言が考えられます。
- 〇〇(源氏名)はお客さんと枕営業をしている
- 〇〇は過去に逮捕されたことがある
上記のような投稿は、客観的に見て社会的評価を下げる内容であると判断される可能性が高いといえます。
名誉毀損にあたる投稿をされた場合、投稿者に対し、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。
また、刑事告訴を行った場合には、名誉毀損罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)として処罰される可能性があります。
なお、「バカ」「ブス」「クズ」のように具体的な事実の摘示がない誹謗中傷の場合には、名誉毀損罪ではなく侮辱罪にあたる可能性があります。
民事上も、名誉感情の侵害として慰謝料請求が認められることがあります。
表現の自由は免罪符にならない
ネットだから何を書いても自由というのは間違いです。
名誉毀損には、違法性阻却事由というものがあります。
簡単にいうと、名誉毀損にあたるような投稿であっても、例外的に違法とされない事由のことです。
しかし、違法性阻却事由が認められるためには、次の条件をすべてみたしていなければなりません。
- ■公共性があること:摘示された事実が、公共の利害に関する事実であること
- ■専ら公益目的であること:私怨や嫌がらせではなく、もっぱら公益を図る目的で投稿したこと
- ■真実性・真実相当性があること:摘示された事実が真実であるか、または真実であると信じたことについて相当の理由があること
特定のキャスト個人を対象とした一方的な誹謗中傷について、これらの条件がすべてみたされ、違法性が阻却されるケースは多くありません。
したがって、投稿者に対し責任を問える可能性が高いといえます。
ナイトワークのトラブル②本名・住所などの晒し行為の被害に遭う
ナイトワークで働いている方が直面するネットトラブルとして、本名や住所、電話番号、昼間の勤務先などを晒されるということが考えられます。
本人の承諾なく、一般に知られておらず、他人に知られたくない私生活上の情報を公開する行為は、プライバシー侵害にあたります。
特に家族や知人にナイトワークを伏せている場合、情報の晒し行為は生活の根底を揺るがしかねません。
ナイトワークに従事しているという事実自体も、ご本人が周囲に伏せている場合には、プライバシーとして保護される情報にあたり得ます。
このような被害を受けた場合には、投稿の削除を求めるとともに、投稿者に対し損害賠償を請求することができます。
ナイトワークのトラブル③リベンジポルノやネットストーカーの被害
性的画像の悪用や、ネット上でのストーキングは、もはやトラブルの域を超え、犯罪被害にあたる可能性があります。
リベンジポルノは即相談を
元交際相手や客などが、私的に撮影された性的な画像を本人の同意なく公開する行為は、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)により処罰されます。
また、2023年に施行された性的姿態撮影等処罰法により、撮影時に同意があった場合でも、本人の意思に反して画像を提供する行為などが処罰の対象となっています。
流出した画像は、拡散すると完全に消すことが難しくなるため、できるだけ早く弁護士に相談し、削除請求と警察への相談を並行して進めることが重要です。
SNSの執拗なDMも規制対象
恋愛感情や、それが満たされなかったことへの恨みから、SNSに連日執拗なコメントを書いたり、行動を監視していることを匂わせたりする行為は、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたる可能性があります。
拒まれているにもかかわらず、DMで執拗にメッセージを送り続ける行為も規制対象です。なお、恋愛感情に基づかない嫌がらせであっても、内容によっては脅迫罪や各都道府県の迷惑防止条例違反にあたる可能性があります。
やり取りは必ずスクリーンショットで保存しておきましょう。
ナイトワークのトラブル④信頼を失墜させるなりすまし
ナイトワークで働いている方の中には、本人を装ったアカウントから偽の情報を発信される、なりすまし被害を受ける方もいます。
アイデンティティの侵害
他人の名前(源氏名を含む)や顔写真を無断で使って不適切な投稿をする行為は、名誉毀損や肖像権侵害にあたるほか、被害を受けた方の社会的評価を著しく低下させる可能性があります。
結果として、そのなりすましアカウントの発言を信じた顧客や同僚からの信頼を失ってしまうことにつながりかねません。
大きな被害を受ける前に、プラットフォーム運営者への通報や削除請求、投稿者の特定を急ぐ必要があります。
また、なりすましアカウントの作成とは別に、ご本人のアカウントに無断でログインする乗っ取り行為は、不正アクセス禁止法違反にあたります。
掲示板やYouTubeなど媒体によって異なる対処のポイント
ネットトラブルは、投稿された媒体によって対処の方法や難易度が変わります。
匿名掲示板の言い返しは逆効果
ネット上の中傷には反論で対抗すればよいという考え方(対抗言論)もありますが、匿名の相手に反論しても有効な名誉の回復にはつながらないことが多く、反論の内容によってはご自身が名誉毀損などの加害者になってしまうおそれもあります。
また、反論することで炎上し、かえって拡散してしまうリスクもあるため、言い返すことは控え、証拠を保存したうえで法的手段を検討したほうが良いといえます。
YouTubeなどの動画による中傷
店舗やキャストを特定し、悪意あるナレーションを付けて営業風景や顔を晒す動画などは、名誉権や肖像権の侵害として削除請求の対象となり得ます。
動画は削除されると証拠が失われるため、動画のURLや投稿者のチャンネル情報、該当箇所の画面を記録しておきましょう。
被害に遭ったら?2つの解決ルート
解決方法は、大きく分けて、投稿を削除することと、投稿者を特定して責任を追及することの2つです。
まずは削除請求
投稿を消すために、サイト運営者やプラットフォーム事業者へ削除(送信防止措置)を依頼します。運営者が応じない場合は、裁判所に投稿の削除を求める仮処分を申し立てます。
発信者情報開示請求で犯人を特定
損害賠償を請求するには投稿者の特定が必要です。2022年10月に新設された発信者情報開示命令の手続き(現在の情報流通プラットフォーム対処法)により、以前よりもスピーディーに、1つの裁判手続きで投稿者の氏名や住所を特定できるようになりました。
ただし、投稿者の特定に必要な通信記録(アクセスログ)は、通信会社で3か月から6か月程度しか保存されないことが多いため、投稿に気付いたらできるだけ早く動き出す必要があります。
特定後の対応:損害賠償請求と刑事告訴
投稿者が特定された後の進め方です。
民事上の損害賠償
誹謗中傷などのネットトラブルの被害を受けた場合、加害者に対し損害賠償を請求できます。
精神的苦痛に対する慰謝料のほか、投稿者の特定にかかった調査費用や弁護士費用の一部、指名の減少などによる営業上の損失も、事情によっては請求できる可能性があります。
また、示談をする場合には、二度と投稿しないことや、違反した場合の違約金を定めた示談書を作成し、再発を防止します。
警察への刑事告訴
加害行為が悪質な場合は、民事上の責任追及だけでなく、名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪などでの刑事告訴も検討してください。
名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪であり、告訴がなければ加害者を処罰することができません。
したがって、加害者の処罰を望む場合には、告訴状を提出する必要があります。
親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月以内に行う必要がある点にも注意が必要です。
ひとりで抱え込まないために:相談窓口の活用
ネットトラブルを自力で解決するのは、精神的にも技術的にも非常に困難です。
そのため、次のような手段を活用してください。
弁護士に依頼する
弁護士は、どの投稿が法的に権利侵害にあたるか、どのような手続きで削除や特定を進めればよいかを熟知しています。
また、ご本人に代わって、運営者への削除請求や、裁判所への仮処分・開示命令の申立てを行うことができます。
特にナイトワークの場合、ご自身の評判は、指名率などにも影響してきます。
したがって、ネットトラブルに強く、ナイトワークの業界に理解のある弁護士を選ぶことをおすすめします。
公的相談窓口
ネットトラブルの公的な相談窓口としては以下があります。
- 法務局の人権相談窓口(みんなの人権110番)
- 誹謗中傷ホットライン(セーファーインターネット協会)
- 都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口
- 違法・有害情報相談センター(総務省)
まずは無料で相談できる窓口を活用し、その後弁護士に相談するという手段も考えられます。ただし、前述のとおり投稿者の特定には時間的な制約があるため、早めに弁護士にもご相談ください。
ネットトラブルのリスクを低くするネット自衛術とは?
ネットトラブルを未然に防ぐために、日頃から意識したいポイントは以下のとおりです。
投稿前の背景などに注意し身バレするリスクを下げる
自撮り写真に写った景色、窓の外、鏡越しの背景、さらにはマンホールの蓋から住所が特定されるケースがあります。
投稿前に私生活が特定される要素がないかチェックする癖をつけましょう。
また、しつこい相手はブロック・ミュートし、二要素認証を設定して乗っ取りを防止してください。
お店との連携
ネットのトラブルは早い段階でお店の責任者に共有しましょう。
お店として対応することで、該当する客の指名を受けない、出入り禁止にするなどの手段を講じることができます。
言いにくいこともあるかもしれませんが、お店との協力体制は非常に重要な手段といえます。
まとめ
ネットトラブルに直面した際、もっとも大切なのは一人で悩まないことです。
時間を浪費して精神をすり減らす前に、冷静に証拠を確保し、弁護士の助けを借りましょう。
早期に相談することで解決するまでの期間を短縮できたり、不利益を最小限に抑えられる可能性が高くなります。
ナイトワークに関するネットトラブルでお困りの方は、お気軽に弁護士にご相談ください。












