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インターネット問題

2026.09.27

従業員によるネット投稿が企業リスクになるケースとは

企業にとってSNSは効果的なマーケティングツールである一方、従業員による不用意な投稿が、企業の社会的信用を失うほどの炎上騒動に発展する可能性があるものといえます。
従業員によるインターネット投稿は、企業の社会的信用の毀損、営業秘密の漏洩、さらには職場環境の悪化といった多大な企業リスクを引き起こす要因となりえます。
本記事では、従業員のネット投稿がなぜ重大なリスクとなるのか、その具体的なケースと企業が講じるべき予防策などについて解説します。

CONTENTS

監修者プロフィール

弁護士法人LEON
弁護士 蓮池 純

発信者情報開示請求や著作権侵害等のインターネット問題に係る事案を多数担当し、
YouTuberやクリエイターの方々からもご依頼をいただいております。

私自身ゲームやアニメなどのエンタメが好きで、
大手エンタメコンテンツ制作会社の法務部へ出向していた経験もありますので、
エンタメ企業を中心とした企業法務にも注力しています。

なぜ今、従業員のSNS投稿が企業にとって重大なリスクとなるのか?

SNSの普及により、誰もが全世界に向けて情報を発信できるメディアを持つようになりました。
この環境下で、従業員は単なる労働者としてだけでなく、企業の情報を外部へ流出させる発信源としての側面も持つことになります。
もっとも大きな要因は、情報の拡散性と永続性です。
一度インターネット上に流出した情報は、たとえ投稿者本人がアカウントを削除したとしても、第三者によって保存や拡散され続け、被害が半永久的に持続する可能性があります。
また、消費者の企業に対する倫理観の要求が高まっていることも無視できません。
従業員の不適切な言動の内容によっては、個人の資質の問題としてではなく、そのような人物を雇用し教育している企業の管理体制の問題として捉えられることもあるのです。

従業員のネット投稿が引き起こす主な企業リスク

従業員の不適切な投稿がもたらす損害リスクとして、以下が考えられます。

ブランドイメージの低下などの信用失墜リスク

企業の社会的信用は、長年の誠実な事業活動によって築き上げられるものですが、崩れるのは一瞬です。
従業員がSNS上で公序良俗に反する行為を行ったり、顧客を蔑視するような発言をしたりすることで、社会全体からの信頼を失います。
特に、食品を扱う企業での衛生管理を疑わせる投稿や、金融機関における情報の不適切な取り扱いを匂わせる投稿は、致命的なダメージとなりえます。

情報漏洩による損害賠償・法令違反など法的リスク

従業員が業務上の非公開情報や営業秘密、さらには顧客の個人情報をSNSに投稿することは、重大な守秘義務違反です。
これにより、企業の競争力が損なわれるだけでなく、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が必要となったり、同委員会から勧告・命令を受けたりするほか、被害を受けた顧客や取引先から損害賠償を請求されたりする可能性があります。
また、投稿内容が他者の名誉を毀損している場合には、投稿者個人が責任を負うことはもちろん、その投稿が業務に関連してなされたものと評価されるときは、企業も使用者責任(民法第715条)を問われるリスクが生じます。

株価下落・売上減少・取引停止などの経済的損失リスク

従業員によって企業の社会的信用が失墜した場合、その影響は経済的な損失として現れることがあります。
上場企業であれば、不祥事の拡散により株価が急落し、時価総額が数億円、数十億円単位で消失することも考えられます。
また、消費者による不買運動が起きれば、売上の急激な減少を招きます。
BtoB企業の場合であっても、不適切な投稿がコンプライアンス違反とみなされ、主要な取引先から契約を解除されたり、新規取引を拒否されたりする事態に発展するリスクが生じます。

従業員の離職・採用活動への悪影響など人材確保のリスク

炎上騒動を起こした企業は、レッテルを貼られることが多く、既存の従業員の労働意欲を著しく低下させる可能性があります。
優秀な従業員ほど、自社の不祥事に嫌気がさして離職していく悪循環に陥ります。
さらに、採用活動への影響は深刻です。
就職活動中の学生や転職希望者は、応募前に企業の評判を調査します。
インターネット上に悪評が残っている状態では、優秀な人材を獲得することは極めて困難になるといっても過言ではありません。

【事例別】従業員のネット投稿による炎上ケース

実際にどのような従業員の投稿がリスクとなるのか、典型的な事例を確認していきたいと思います。

ケース1:アルバイト従業員による不適切動画の投稿(バイトテロ)

従業員の不適切な投稿として、勤務時間中に社内の厨房で食材を不適切に扱ったり、備品を使用して悪ふざけをしたりする様子を動画で投稿する行為、いわゆる「バイトテロ」があげられます。
本人たちは仲間内での内輪ネタのつもりであっても、投稿された瞬間に不特定多数の目に触れ、拡散されるリスクがあります。
この場合の企業ブランド価値の毀損は甚大であり、内容によっては店舗の臨時休業や清掃費用の発生、さらには客足の途絶といった回復困難な損害に繋がります。

ケース2:従業員による機密情報・未公開の内部情報の書き込み

開発中の新製品のスペックや、未発表の提携話などを従業員が匿名掲示板やSNSに書き込むことは、秘密保持義務違反にとどまらず、営業秘密の漏洩として不正競争防止法違反に問われうる典型的なケースといえます。
匿名であっても、書き込まれた情報が詳細であった場合には投稿者が特定される可能性は低くありません。

ケース3:顧客情報や個人情報に関するSNS投稿

従業員の投稿が炎上するケースとして、来店した有名人などのプライベート情報について投稿したり、顧客の容姿や注文内容を揶揄する書き込みをしたりするケースが考えられます。
また、配送業務に携わる従業員が、届け先の住所や氏名が写った写真を投稿する事案も発生しています。
これらはプライバシー侵害そのものであり、顧客の安心を裏切る行為として企業が消費者から激しい非難を浴びる可能性が高くなります。

ケース4:プライベートなSNSでの会社・同僚への誹謗中傷

従業員の投稿が炎上するケースとして業務時間外に、個人のアカウントで上司の悪口や同僚への攻撃的な書き込みを行うことなどが考えられます。
たとえ個人のプライベートな投稿であっても、内容から企業が特定できる場合、不適切な職場環境であると社会に認識されるリスクが生じます。

このような行為は職場環境の悪化を招き、企業秩序を乱すものとして問題視されます。
また、同僚に対する攻撃的な書き込みは、名誉毀損や侮辱として投稿者本人が法的責任を負うだけでなく、企業としても、被害を受けた従業員に対する職場環境配慮義務の観点から、適切な対応を求められることになります。

ケース5:業務に関連する差別的・政治的な発言

従業員が特定の国籍、性別、職業などに対して偏見に満ちた投稿を行ったり、過激な政治的主張を勤務先の肩書きと共に発信したりした場合、個人の責任でなく、企業の責任を追及されるケースがあります。
グローバル社会において、多様性への配慮を欠く発言は致命的です。
「この会社の従業員はこのような偏った考えを持っているのか」という疑念を持たれることは、広範な顧客層を敵に回す結果となりえます。
企業の公式見解ではないとしても、従業員の発言は企業のスタンスとして同一視される危険性があるのです。

なぜ従業員は問題のある投稿をしてしまうのか?その原因と心理

従業員による不適切なSNS投稿などの対策を講じるためには、なぜこのようなリスクの高い行為が行われるのかについて考える必要があります。

ネットリテラシーの欠如とリスク認識の甘さ

従業員による炎上騒動が起きる要因として、インターネットのリスクに対する認識が甘いことが考えられます。
具体的には、SNSなどの投稿が「誰に」「どこまで」広がるのか、そして「消したくても消せない」というリスクを自覚していない可能性があります。
そのため、技術的な知識や情報発信に伴う責任の重さなどについて社内で研修などを行った方がいいといえます。

承認欲求や仲間内での悪ふざけの延長

従業員が不適切なSNS投稿を行ってしまう原因のひとつとして、承認欲求や限られたコミュニティ内での悪ふざけと錯覚してしまうことが考えられます。
SNSの「いいね」や「リポスト」によって得られる一時的な高揚感や、仲間内での注目を集めたいという承認欲求が、過激な投稿への引き金となります。
特に若年層の場合、現実社会での評価よりもネット上での反応を優先してしまうことが少なくありません。

企業が今すぐ取り組むべきSNSリスクへの予防策

一度起きた炎上を鎮火させるのは困難ですが、未然に防ぐための手立ては存在します。

ソーシャルメディアガイドラインの策定と周知徹底

企業が従業員による炎上リスクを低くする手段として、まず、どのような投稿をすべきでないのか、具体的な「ルール」を示すガイドラインの作成があげられます。
ガイドラインを作成する場合には、「不適切な投稿を禁止する」という曖昧な表現ではなく、具体的なNG例を明記すべきといえます。
また、ガイドラインには個人のアカウントであっても、所属を明らかにしている場合には企業のブランドを背負っていることを自覚させる内容を含めた方が良いでしょう。
さらに、策定したガイドラインは、社内サーバーに保存しておくだけでなく、定期的に全従業員へ研修などを通してリマインドすることが重要です。

就業規則への明記と服務規律の明確化

企業がSNSの炎上リスクを回避する手段として、SNSによる不適切な投稿が懲戒処分の対象となることを、就業規則に明文化することが考えられます。
業務外の私的な投稿であっても、企業の社会的評価を毀損する場合には、企業秩序維持義務や誠実義務の違反として懲戒処分の対象となる可能性があります。判例上も、私生活上の行為であっても、企業の社会的評価に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるものについては、懲戒の対象となりうるとされています。
ただし、懲戒処分が有効となるには、就業規則の根拠規定に基づき、行為の重大性、信用毀損の程度、過去の事例との均衡などを総合的に考慮し、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要となります(労働契約法第15条)。
また、私生活上の言動を過度に制約する規定は、表現の自由との関係で無効と判断される可能性も否定できません。
したがって就業規則での明文化を行う場合には、弁護士に相談した方が良いといえるでしょう。

全従業員を対象としたSNS研修・eラーニングの実施

企業のSNSの炎上対策は、ガイドラインなどのルールを決めるだけでなく、なぜそのルールが必要なのかを教育することが重要です。
研修では、過去の炎上事例を具体的に紹介し、一度の投稿で当事者本人や企業がどのような不利益を被ったのかについて紹介することが有効です。
リテラシー教育は、一度きりで終わらせず、新しいSNSの流行やトレンドに合わせて継続的に行うことが期待されます。
自分の投稿が誰かを傷つけたり、会社に数億円の損害を与えたりする可能性があることを、自分事として捉えさせることが教育の目的です。

問題投稿が発覚した場合の対応フロー

SNS上の炎上は、どれほど予防に努めていても、リスクをゼロにすることはできません。
従業員の問題投稿が発覚した場合のフローについて紹介します。

STEP1:事実確認と証拠の保全

従業員とみられる者の問題となる投稿を発見したら、まずは証拠の保全を行います。
該当の投稿が削除される前に、スクリーンショットを撮り、URLを記録します。
いつ、誰が、どのような内容を、どの媒体で発信したのかを特定します。
証拠の保全を終えた後、投稿者が自社の従業員であると特定できた場合には、本人にコンタクトをとり、速やかな削除を促してください。
本人が応じない場合や投稿者が従業員かどうか分からないときに備えて、投稿内容が企業の名誉・信用を毀損するものであれば、サイト管理者に対する削除請求(送信防止措置請求)や、情報流通プラットフォーム対処法に基づく発信者情報開示請求の準備を並行して進めます。

STEP2:社内調査と投稿者へのヒアリング

投稿者が自社の従業員であると判明した場合は、速やかに本人へのヒアリングを実施します。
「なぜそのような投稿をしたのか」「事実関係に間違いはないか」を丁寧に聞き取ります。
本人が投稿を認めている場合は、反省の態度や意図を確認します。
ヒアリングは、感情的な糾弾ではなく、後の法的判断の材料とするために客観的な事実を集める場として位置づけます。

STEP3:対外的な公表・謝罪の検討と実施

不適切な投稿の拡散度合いに応じて、公式な謝罪や公表を行うべきかを判断します。
事実関係を隠したり、不用意な否定をしたりすることは、さらなる炎上を招くおそれがあるため、公表する場合には、調査で判明した事実関係を正確に伝えることが重要です。
企業側が、現在どのような対応をとっているかを誠実に表明することが、信頼回復への近道となりえます。

STEP4:当該従業員への適切な処分と法的対応

社内調査の結果に基づき、本人に弁明の機会を与えたうえで、就業規則に照らして適切な懲戒処分を決定します。
処分は、行為の重大性と照らし合わせて相当な範囲で行わなければなりません。
従業員の投稿の悪質性が高いと判断した場合には、その者に対する損害賠償請求や、状況によっては、威力業務妨害罪・偽計業務妨害罪、不正競争防止法違反(営業秘密侵害罪)などでの刑事告訴を検討することも必要となります。
ただし、従業員に対する損害賠償請求については、判例上、企業が被った損害の全額を請求できるとは限らず、諸般の事情を考慮して相当な範囲に制限されることがある点に注意が必要です。

STEP5:再発防止策の策定と実行

炎上事件が一段落したら、なぜ今回の件が起きてしまったのかを分析し、具体的な再発防止策を練ります。
「個人のモラルの問題」として片付けてしまうのではなく、社内の教育体制や管理体制に不備がなかったか、問題点を洗い出します。
全従業員への再度のアナウンスや、就業規則の改定、研修内容の見直しなどを実行に移します。

まとめ

今回は、従業員の不適切な投稿による企業リスクとその対策を解説しました。
従業員のインターネット投稿によるリスクは、単なる私生活上の問題にとどまらず、企業の存立に関わる重大な損害をもたらす可能性があります。
SNSは、個人の自由な表現の場であると同時に、企業の信用を背負った公の場でもあるという認識を、組織全体で共有しなければなりません。
SNSの炎上対応や、管理体制などを整えたいとお考えの場合には、ネットトラブルに精通している弁護士に相談することを検討してください。
弊所では、従業員の問題投稿が発覚した際の初動対応から、投稿の削除請求・投稿者の特定、就業規則やソーシャルメディアガイドラインの整備まで一貫して対応しております。お気軽にご相談ください。

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